千代に八千代にパリジェンヌのように美しく

パリのエステシャンがあなたに伝えたい、年を重ねても美しいパリジェンヌのきれいの秘訣

パリのエステティシャンになるには? (2)

 


エステティシャン国家資格 実技試験

 

試験日が近づいてくると、パリエステティックアカデミーより受験時に必要なもののリストが郵送されてきました。

当日は、お客様役のモデル同伴で、サロンを開くことができるほどの道具一式を持参しなければなりません。

 

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モデルの条件は、30歳以上であること。

試験はクレンジングから始めるので、モデルは、ファンデーション、アイシャドウ、マスカラそして口紅までフルメイクをしてこなければなりません。

脱毛の施術に備えて、脇、両腕両脚、ビキニラインそして眉毛のムダ毛処理をしていない状態であること、手足の爪も手入れのしていない状態でマットな濃い色のマニキュアを塗ってくることが要求されます。

当日試験官が、モデル一人一人を丹念にチェックするため、何かひとつでも条件を満たしていない場合は、もちろん減点になります。

 

フランスの学校の新年度は9月から始まり6月に終了しますので、夏休み直前の6月に国家試験を受験します。

夏服に着替えるこの時期に、体中のムダ毛を生やしたままにしなくてはいけないモデル役の準備もたいへんです。

 

そして、当日持参する材料一式の準備もたいへんです。

 

「先生、当日はトラック1台レンタルしたほうがいいですか?」

 

授業中にそんな質問が飛び交うくらいの大荷物。

エステのモデルと聞くと、フェイシャルケアやマニキュアを無料で受けることができる優雅な役回りのようですが、前もって爪やムダ毛を伸ばしたり、当日は受験者と二人でスーツケースやメイクボックスを運んだりと、未来のエステティシャンの重要なサポ-ト役なのです。

 

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そして、ついに試験本番。

試験前の会場の下見は禁止されていましたので、本番当日、いつもと勝手の違う教室で、3時間半の実技を行うのはかなり緊張しました。

試験会場がたまたま自分の学校に当たった学生はラッキ-。

当日の試験官の一人が、偶然にも自分の学校の先生に当たるとこれもまた本当に運がいいことです。

試験官は公正に審査しなければいけないとは言うものの、自校の合格者を一人でも多くしたいと思うのは当然で、その分採点も甘くなるでしょうから。

 

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さて当日、私に与えられたお題は、

“挙式当日の花嫁”

結婚式が間近に迫り、ストレスと寝不足による顔色のくすみを気にしている。

彼女は、肩を大きくだしたアイボリー色のドレスを身にまとい、黄色とオレンジ色の花のブーケを手に持つ。

 

― クレンジング

― 眉毛の脱毛

― 彼女の肌に適したフェイシャルエステ(少なくとも2種類の機器使用)

― 脇の下のワックス脱毛

― マニキュア、ハンドマッサージ付き(パール入りマニキュア使用)

― 花嫁にふさわしいメイク

― 筆記 マニキュア施術行程表の作成

 

以上を3時間半で仕上げなければなりません。

 

①ワックス脱毛は、別室に用意されているので時間のロスを防ぐために、まず最初に取りかかるのが鉄則。これさえ済ませてしまえば、後は落ち着いて施術ができる。

脇は、脚やビキニラインに比べてワックスを塗布する部分が小さいため、ほとんど一瞬にして脱毛できる。

脱毛の配点は140点中28点。

 

②クレンジング

口紅とアイメイクをコットンと綿棒で丁寧に落としてから、顔全体のメイクをクレンジングミルクとすばやく馴染ませ、ティッシュペーパーでふき取る。最後にトニックローションでもう一度ふき取る。

この時点で、審査員に手を上げてクレンジング終了を告げ、きちんとメイクが落ちているか採点をしてもらう。

クレンジングは合計140点中6点。

③眉毛の脱毛

毛抜きを使って眉毛のラインからはみ出している部分をすばやく引き抜く。

これは4点。

 

④スクラブ

肌のくすみをなくし、透明感をだすために、スクラブ剤を使用。

指の腹を使って、やさしく螺旋を描くようにして古い角質を取り除く。

 

⑤ルカ・シャンピオンニエール(エステ機器)

暖かいスチームを顔全体に噴霧することにより、スクラブの取り残しをきれいに洗い流し、表皮に潤いを与える。

 

モデラージ(マッサージ)

フランスでは厳密には“マッサージ”とは、運動療法士による医療目的の行為を意味し、エステティックサロンでの“マッサージ”の施術は法律的には認められていません。

しかしながら、実際にはエステティックサロンでもマッサージは行われています。

このエステティシャンによるリラクゼーション目的のマッサージは、公式には“モデラージ”と呼ばれます。

双方区別されているにもかかわらず、一般的にはあいまいな点が多く、これまでにも何度も、運動療法士団体とエステティック業界の間で物議をかもしています。

運動療法士によるマッサージは治療目的の医療行為のため、医師による処方箋が必要で、それには体のどの部分をどういう目的で、どれくらいの頻度で合計何回の施術を受けるかが明示されており、医療保険の還付対象となります。

混同を避けるためにフランスのエステティック業界では、モデラージという用語が使われています。

けれども、モデラージではお客様には何のことだか伝わらないため、実際にはマッサージと言っていますけれど…。

 

顧客の緊張感やストレスを緩和するために、顔全体と目の周りの軽擦マッサージをたっぷり時間をかけて行う。マッサージは血行を促進するため、顔色も良くなる効果がある。

 

⑦パック

クリーム状の保湿パックを目と口を避けて顔全体に均一に塗布し、10分間放置する。

 

その間に使用済みの化粧品や道具をすばやく片付ける。3時間半の実技を通して常に、自分の作業台の清潔さや整理整頓ぶりも採点対象となるので気を抜くひまがない。

そして、次にとりかかるマニキュアの準備を始める。あらかじめ、濃い色が塗られているので、リムーバーで注意深くふき取る。

 

⑧ヴァポレル(エステ機器) 

パックを、スポンジで完璧にふき取ってから(顎下はふき残しがでやすいので要注意)、冷水を噴霧し、肌を収斂させる。

 

⑨デイクリームを塗布し、審査員にフェイシャルエステ終了を告げ採点を受ける。

配点は、エステ手技25点、機器の取り扱い12点。

 

⑩マニキュア 

紙やすりで爪の形を整えた後、甘皮やささくれを丁寧に処理したのち、焦る気持ちをおさえながら、ゆっくりとハンドマッサージを行う。

パステルカラーのパール入りマニキュアを塗布する。

完全に乾く前に不注意で触ってしまうとまたやり直さなければならないので、塗り終えたら手を挙げて、すぐに審査員の採点を受ける。 配点は25点。

 

⑪最後にメイキャップに取りかかる。

花嫁メイクなので、あまり濃くならないようにあくまでもナチュラルにする。

黄とオレンジ色のブーケに合わせたパステルカラーで華やかさを出し、写真写りが良くなるようにパール入りのパウダーで輝くような肌色に仕上げる。

メイクの配点は、20点。

 

残り10分で筆記を仕上げ、荷物をすべて片付けて、ぎりぎり制限時間以内にすべて終了。

授業で模擬試験を何度も経験してきたけれども、やはり本番はいつもと勝手が違い予想以上に気持ちが焦ってしまった。

時間配分が難しかったけれども、何とか無事終了。

 

 

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パリで働くには?

 

CAPの資格を取得できたら、パリでさらに腕を磨いてみたいですね。

私の在学中には、オランダの船会社が世界中を旅行する豪華客船で働くエステティシャンを募集していたのを覚えています。クラスメイトが競って応募していました。

パリの豪華パラス(超高級ホテル)は、今やスパ設備が必須なので、エステティシャンの需要はますます高まっています。また、日本語情報誌にも、日本人エステティシャン募集の広告を目にすることもあります。フランス領タヒチのリゾートホテルのエステティシャン募集の広告を目にしたこともあります。求人情報には事欠きません。

 

それよりも難しいのは、労働許可証を取得することです。これがないと、フランスで合法的に就労することはできません。

私は、就職が決まってから移民局の承認を得て、在日フランス大使館に就労ヴィザ申請をし、承認後渡仏、結局正式に就職するまで半年くらいかかりました。

周囲には、もっと早く容易に取得できた人もいれば、拒否された人もいて、運よくくじに当たるようなものかも? と思えるくらいに審査内容は複雑なようです。

その上、申請方法や取得のための条件は、たびたび変更されるのでその都度確認する必要があります。

親日派シラク大統領の時代は、日本人の労働許可は下りやすいとのまことしやかな噂もありましたが、近年は失業率の増加や移民の流入の現状から承認が厳しくなっていると思われます。

 

詳細は、在日フランス大使館のホームページの就労ビザの項目を参考にしてください。