まずはじめに、
フランスでは、外出制限措置が制定されてから18日目の本日、588人が新型コロナウイルス肺炎により亡くなりました。合計6507人になります。
今週に入ってから、日々新たに人工呼吸器が必要な重症患者の人数は、ほぼ横ばいになってきたため、今回の危機もピークに近づいてきたのではとの希望的観測が聞かれるようになりました。
マクロン大統領が、「フランスは、コロナウイルスとの戦時下です」と外出制限令を発動した当初は、私は、この見えない敵との戦いに、今まで経験したことのない恐怖を感じました。
私の夫は、パリから車で1時間半の中部地方で高齢者介護の仕事に就いていますので、そちらにも住居があります。中部地方では感染者は増大していません。急速に感染が拡大しているパリで孤立するのは心細いので、夫に合流しようかどうかずいぶん迷いました。
政府からの命令は 「自宅にとどまること」
このウイルスの恐ろしいところは、自分が感染しているかどうかわからないことなのです。風邪を引いたような軽い症状で終わる人もいれば、何の症状も出ない人もいるのです。ところが、一旦感染してしまうと、他人に感染させる威力が計り知れないのです。
私は元気なつもりでも万が一感染していた場合、私は夫に移してしまい、そればかりかパリから地方の町に病原菌を運んでしまうことになるのです。
大げさな話ではありません。
それほどのリスクを冒すわけにはいきません。
結局、一人で残ることにしました。
TVのニュースで映し出される病院の緊迫した様子や、毎日19時に発表される新たな死者の人数に、涙があふれ出て、体の震えが止まらなくなることもありました。
恐ろしさのあまり、パリのアパートから1歩も外出できない日々が続きました。
病院勤務(心理カウンセラー)の知人に電話すると、
「救急病棟に搬送されてくる高齢者のためには、人工呼吸器は残っていないの。本人ももう助からないことを理解しているから、最後に一目家族に会いたいと涙を流しながら懇願するんだけど、面会禁止のためそれさえもかなわず亡くなっていくのを目にすることが耐え難い」と精神的に疲労困憊していました。
約2週間が過ぎ、私はやっと平静さを取り戻してきました。
冷蔵庫が空になってきたので、必要に迫られてスーパーに行ってきました。
長い行列もなく、買い物を済ませて帰る客と入れ替わりに一人ずつ中に入ります。売り場の入り口では、警備員が来店客一人一人に消毒ジェルを1プッシュずつ塗布し、両手を殺菌してから買い物を始めます。
野菜や果物は各自が好きな量を袋に詰めて購入するシステムなので、皆の手が消毒済みだと一安心です。
ところで、フランスと言えばフランスパン。
よくパリジャンが長いバゲットをむき出しのまま小脇に抱えた姿のイラストを見かけますが、今でもあんな感じです。
コロナウイルスの感染がこれほど騒がれていても、相変わらずバゲットを手づかみで袋に入れるパン屋さんもあれば、例え手袋をはめていても、レジで現金を触ったその手でパンをつかんでいます。
また、バゲットは長方形の紙袋から半分はみ出した状態でそのまま持って帰ることになります。私は以前から気になっていたので、丸ごと入る袋を持っていくのですが…。
習慣だから仕方ないのでしょうね。
日本ではありえませんね、パン屋さんでは必ずトングを使いますよね。
日本人は日頃から手洗いを怠らないし、マスクをする習慣もあり、大変清潔な国だとつくづく思います。
ウイルス感染の拡大を防ぐことのできる国民性を誇らしく思います。
でも、ここで油断しないでください。
どうか今しばらくは外出を控えて、くれぐれも感染を拡大させないようにお気を付けください。
フランスのようにならないように。
私の気持ちも落ち着きましたので、ブログを更新いたしました。
最後までお読みいただければ幸いです。
2020年4月3日
パリジェンヌ 意外に毛深いムダ毛のお手入れ事情
Je ne peux pas peindre un ange car je n’en ai jamais vu !
Gustave Courbet
私は天使を一度も見たことがないから描くことはできない
ギュスタヴ・ クールべ
パリ オルセー美術館が所蔵している、フランス写実主義(リアリズム)の画家、ギュスタヴ・ クールべの作品 「L’Origine du monde 世界の起源」を ご覧になったことがありますか?
女性の胴体部分、とりわけ女性器を詳細に描写している、猥褻か?芸術か? 21世紀になっても見るものに衝撃を与える作品です。
フランスでは、当然のように芸術として容認されていますが。
2011年に、フランス人教師がFacebookに投稿すると、一方的にアカウントを停止され、「表現の自由を侵害された」とフランスでは裁判に発展しました。そのことが世界中で報道されたので、記憶にある方もいらっしゃるかと思います。
私は20年前、オルセー美術館で作品を鑑賞後、ミュージアムショップでこの作品のポストカードが販売されているのを見つけた時には、いささか驚きました。
ルノアールの「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」に次いで2番目によく売れています。
ところで皆さんは、このアンダーヘアからは、どのような女性を想像しますか?
フランス人女性も毛深くて、しかも毛色も濃くて日本人のとあまり変わらないのね!というのが私の第一印象でした。
顔が描かれていないので、長らくモデルはクールベの当時の恋人、アイルランド人のジョアンナ・ヒファーナンと想像されていました。肌の色と乳首の色から白人には違いないでしょうが、しかし彼女の頭髪の赤毛と一致しないという疑問を抱く声もありました。
必ずしもアンダーヘアと頭髪の色は同じとは限りませんが、違いすぎますよね。
この写実派の画家が、下半身を綿密に描きながらアンダーヘアだけ実物と違う色を塗ったとも考えられません。モデルの正体は不明のまま時が過ぎました。
近年になって、この作品を依頼したオスマン帝国の外交官 ハリル・シェリフ・パシャの当時の愛人、オペラ座バレリーナのコンスタンス・クニョーであることがわかりました。
バレリーナなのに、アンダーヘアのお手入れしていないの?
そんな考えが私の頭をよぎりましたが、作品が描かれた1866年当時はそれが普通だったのかもしれません。
20世紀初めまでフランスの上流階級の女性たちの間では、腋毛を処理することさえ猥褻な行為で、貞淑さに欠けると考えられていました。
今とは大違いですね。
冬期でも、太陽を求めて南国にヴァカンスに出かけることもありますし、日照時間の短いこの時期こそ、コンサートやオペラなどの夜の外出やホームパーティにドレスアップして肩や腕を出したドレスを身に着ける機会も増えますので1年中フランス女性のムダ毛のお手入れに抜かりはありません。
現在では、冬でもわき毛を生やしたままにしているのは匂いの元になるので、不潔の代名詞になっています。
エステティック専門学校の実技カリキュラムの中で一番時間を割いてみっちりと技術を習得させられたのは、ワックス脱毛でした。一番需要があるからです。
今でもエステティックサロンで全体売上げの20~25%を占めています。
顔、腕、脇、脚そしてビキニライン、毎週毎週、相モデルになって練習に励みました。
ムダ毛はそうすぐには生えてきませんので、他のクラスの先生にも授業の合間に協力していただき腕を磨きました。
近年は、美容外科医によるレーザーでの永久脱毛も一般的になってきたとはいえ、それでもいまだにヴァカンス前になると街のエステティックサロンは脱毛の予約で大忙しです。
フランス女性の5人に1人は金髪です。
白人女性の肌は私たちよりもずっと色白で、瞳の色も薄いので、白い肌に薄い色であまり目立たないムダ毛を想像しますが、実際にはそうでもないのです。
スウェーデン人やフィンランド人は人口の80%以上は本物の金髪ですが、生まれながらに金髪のフランス女性はむしろ珍しく、52%は、脱色によるものなのです。
大半のフランス人の頭髪の色は、栗色に分類されます。
なので、白い肌には栗色のムダ毛がかなり目立ちますね。
そればかりか、Vラインはムダ毛が太ももまで広範囲にわたっている場合もあります。
いくつになってもセクシーなランジェリーにこだわるフランス女性。
パンツやボディラインに沿った服をエレガントに着こなすために、下着のラインが響かないTバックのショーツを身に着ける女性が多く、当然1年中ムダ毛のお手入れは欠かせません。
お洒落なタイツやガーターベルトで止めたストッキングは身に付けますが、肌色のパンティストッキングをはくよりは生脚を好むので、なおさら脚の脱毛も大事です。
年齢に関係なく、つねに恋愛にスタンバイのこの国では、あたり前ですね。
フランスのエステティックサロン予約専用WebサイトTreatwellによるデリケートゾーン脱毛の集計(2018年7月)では、
1位 トータル 41%
2位 ブラジリアン (ハイレグライン) 37%
3位 地下鉄の切符形 (チケドメトロ)16%
4位 クラシック 6%
パリジェンヌの場合、全脱毛をしている女性は、全国平均よりも26%多い 67%
18歳-24歳の女性では、72% がフル脱毛をしています。
かつては、パリジェンヌの間では、チケドメトロと呼ばれるパリの地下鉄の切符のように細長く残すのが流行っていましたが、いつの間にか主流は全脱毛に移ったようです。
ヴァカンス先で、ミニマムの生地で覆われただけの肢体に余すことなく存分に陽射しを浴びせるためには、当然のことでしょうね。
白色や黄色のビキニを着た時にも心配いりませんね。
ちなみに、パリのエステティックサロンでのワックス脱毛の価格はおよそ以下の通りです。
脇 20€
腕 30€
脚 40€
脚 膝下 30€
Ⅴライン クラシック(下着のライン)20€
ブラジリアン (ハイレグライン)30€
トータル 40€
毎月9.90€の会費を払えば、いつでも予約なしで格安料金で脱毛を受けられるBody Minuteというフランチャイズのエステティックサロンがフランス中に450店舗あり、さらに拡大中なことからも、フランス女性がどれほどムダ毛を毛嫌いしているかわかりますね。
ところで、なぜいまだに、ワックス脱毛というこの伝統的な方法に頼る女性が後を絶たないのでしょうか?
脱毛用のワックスをヘラで毛の流れに沿って塗り、数分後固まったワックスを毛の流れとは逆方向に一気にはがします。その際に、体毛を力で無理やり引き抜く原始的な方法です。素早く広範囲の脱毛が片付くのでとても便利です。ベテランのエステティシャンに頼めば、あっという間に終わります。
レーザー脱毛とは、黒色や濃茶色に吸収される波長のレーザーを皮膚に照射することによって、毛根や毛穴の奥にある毛を生やす組織を破壊する方法です。そのため、永久脱毛が可能です。
しかし金髪や白髪には効果がありません。また、黒い肌や日焼けした肌には、その色に反応してしまうので施術はできません。
友人は施術時に黒い下着を身に着けていたため、レーザーが下着の黒色に反応してしまい火傷してしまいまいました。(施術者のミスですが)
私たち日本人は、明るい肌色に濃い色の体毛なので、レーザー脱毛はとても効果的ですが、もともと金髪の白人の場合には適していません。
そして日焼けしていない秋から冬にかけて、5~8週間おきにせっせとクリニックに通わなければいけませんが、春先になってから慌ててももう間に合いません。
それらの理由から、いまだにいつでもできるワックス脱毛が重宝されているのでしょう。
美容クリニックでの医療レーザー脱毛の価格は、ワックス脱毛とは比較にはなりませんが、こちらは、5~8回で永久脱毛ができます。
わき 50~75€
腕 120~150€
脚 200~400€
脚 膝下 150~175€
Ⅴライン クラシック(下着のライン)60~120€
ブラジリアン (ハイレグライン)75~150€
トータル 100~200€
医療レーザー脱毛の場合は、初回診察時に、医師が個人の毛質や毛量に応じて金額と回数を見積もります。費用はかなり個人差があります。
施術の1時間前に麻酔効果のあるクリームを塗り、痛みを和らげますが、それでもVゾーンのように敏感な部分はかなり痛みを伴います。
私は、上唇の上、鼻の下の部分も試したのですが、あまりの痛さに1度で挫けてしまいました。再度トライしたいと思っていますが、それだけのためにクリニックに行くのもおっくうなので、ついつい後回しになっています。
フランスではウオッシュレットが普及していないため、衛生面からデリケートゾーンの全脱毛をしたくなりました。でもその前に日本の状況を見てから決めることにしました。
一時帰国の際には必ず何度も温泉に行き、アカスリとマッサージをうけ、心身の疲れをいやすのを楽しみにしています。湯船に浸かっていると自然と他人のアンダーヘアが目に入ってきますが、これまでに一度も全脱毛をしている女性に出会ったことがありません。
私だけが無毛の状態では周囲の視線にさらされて恥ずかしい思いをするのでは?と危惧して今のところはまだ残しています。
ところで、がん治療の副作用で髪の毛が抜け落ちてしまうことがあるのはご存知かと思いますが、実はそれだけではなく眉毛や睫毛、陰毛まで抜け毛が生じることもあります。
病院で出会う患者さんから、
「子供みたいで、女性としての魅力を失ってしまったようで自信をなくした」
「パートナーにこんな姿を見られたくない」
と落ち込んでいる声を耳にします。
せっせと脱毛に通う女性が多数のフランスですが、本人の意思に反して体毛を失ってしまうのはつらいものなのですね。
女心はとてもデリケートで複雑なのです。
フランス家庭の常備薬 BIAFINE
最後に、フランスでは誰もが知っている塗り薬をご紹介します。
放射線治療による紅斑、軽度の火傷や脱毛後の赤くなった肌の炎症を鎮めるために使用します。
日焼け後のケアのため、ヴァカンスの必需品でもあります。
93gのチューブは4~5€、186gは6~7€とお値段もお手頃です。
夏休みが近づくと薬局には山積みにされています。
脱毛後のヒリヒリした肌にも、厚目にしっかり塗りこみます。
処方箋なしでどこの薬局でも購入できますので、フランス旅行中に思いがけず日焼けをしてしまった場合には、ぜひお試しください。