千代に八千代にパリジェンヌのように美しく

パリのエステシャンがあなたに伝えたい、年を重ねても美しいパリジェンヌのきれいの秘訣

フランス外出制限の今、自分を見つめなおす

 

フランスで外出制限措置が施行されてから1か月が経過しました。

本日(4月16日)753人、これまでの合計17,920人の死亡(病院と高齢者施設等)が発表されました。現在も3万人以上が入院中で、パリとその近郊の病院にはまだ病床の余裕がない状態が続いています。

コロナウイルスの威力は、当初の予想をはるかに超えるほど恐ろしいものです。

毎日毎日、数百人もの命が失われています。

お亡くなりになられたひとりひとりには、それぞれに深い悲しみに沈むご家族や友人知人がおられることでしょう。

信じがたいことですが、これは今のフランスの現実です。

 

外出制限や収入の減少は、精神的にも経済的にも私たちの生活に支障をきたします。

でも、日本の皆さま、どうか今しばらくは外出を控えて、くれぐれも感染を拡大させないようにご用心してください。

 

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一日中自宅にいると、物音でアパートの住人の行動がわかります。

隣は、小さい子供が3人の5人家族なので、昼間退屈している子供たちがアパート内で飛び跳ねたり走り回ったりしているのが伝わってきます。

外出できないので仕方ないですよね。

 

上階からは、マダムのハイヒールで歩き回る音がカツカツ響いてきます。以前から時々聞こえていたのですが、私も彼女も昼間はほとんど留守にしているのでそれほど気になりませんでした。朝からパンプスを履き、掃除機をかける時もカツカツ動いています。

ご存知のように、フランスは自宅でも土足なのです。帰宅後はスリッパに履き替えるご家庭もありますが、基本的には靴を履いたままです。

物音が階下に響かないようにと、床に絨毯を張ることもできますが、近年はフローリングが人気のため、靴音が聞こえやすくなっています。

上階のマダムは、普段の外出と同様に一日中パンプスを履いて過ごしているようです。

 

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マクロン大統領夫妻   pinterest.com

 

 

フランスと日本の違い

帰宅後や休日にスウェット上下で過ごす習慣はありません。スウェットウエア=パジャマと思っている人も少なくはないでしょう。

外出時も自宅でも同じ服装をしています。

パリに来たばかりの頃、16区の高級住宅街にあるアパートに住んでいたことがありますが、同じ建物のムッシューは、毎日曜日の朝、ジャケットを着て、ネクタイを締めて新聞とパンを買いに行かれていました。これも長年の習慣なのでしょう。

 

私は、家から出る直前に靴を履き、帰宅後すぐにスリッパに履き替えます。

一日中靴を履いているのは、いつでも外出できるようにスタンバイしているということですね。

パリジェンヌは、休日くらいは、リラックスした服装でだらだら過ごしたいと思わないのでしょうか?

その答えは、シャネルの名言にあります。

 

« Ne sortez jamais de chez vous, même pour cinq minutes,

sans que votre mise soit parfaite, bas tirés et tout,

c’est peut-être le jour où vous allez rencontrer l’homme de votre vie. »

                                                                                                 Coco Chanel

たとえ5分でも、ストッキングをしっかり引き上げて、申し分のないように身なりを整えずして、外出してはいけません。

その日、あなたは運命の男性に出会うかもしれないのですから    

                                                                                              ココ・シャネル

 

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 madame.lefigaro.fr

 

フランス女性に人気の高いファーストレディ、ブリジット・マクロン夫人もいつもハイヒールを履きこなしています。

パンプスを履くと、背筋がピンと伸びてスタイルが良く見え、洋服もきれいに着こなせるので、気分がいいのはわかります。

でも、60代70代になってからもそうあり続けるのは容易なことではないと想像できます。大統領夫人に限らず、フランスのマダムはいくつになっても特別な外出時にはドレスアップをしてパンプスを履き続けています。

室内でも土足文化の国では、あたり前に身についた習慣なのでしょう。

美容の観点からは、美しく年齢を重ねるための秘訣の一つだと思います。

しかしながら、今回のコロナウイルス感染を鑑みると、家の内と外の境界がはっきりしている敷居のある日本の生活習慣は、外からの病原菌を遮断することができ、衛生的なことがわかります。

 

 

生活必需品以外の商店はすべて閉店

外出制限の期間中は、美容院も閉店のため、私は2か月以上毛染めをしていません。

普段は生え際が伸びてきたらリタッチをするので、これほど白髪が多くなっているとは思いもしませんでした。

大鏡でよく見ると、分け目だけでなく内部にも部分的に白髪が密集して生えていることに気づきました。

制限が解除されるまでこのままにしていると、グレイヘアに近づきそうです。

街でグレイヘアのマダムを見かけると、年齢相応のナチュラルな魅力にあふれ憧れます。彼女たちの髪は元の色が栗色なので、グレイよりももう少し薄い色でプラチナカラーに輝いています。日頃のヘアケアの賜物でしょう。

 

ところで、白髪って、ふつうの毛よりも目につきませんか?

白は膨張色なので、目の錯覚でそう見えるだけかとも思っていましたが、実は、白髪の断面は扁平になる傾向があるため、円形の黒髪より太く見えるのです。その上、伸びも早いので目立つのです*。

白髪が、まだ数えるほどのうちは、汚いもののように引き抜いていました。

徐々に増え始め、いつも抜いているとそこだけ薄くなるのが心配になってきてからは、白髪染めをするようになりました。

その数がこれほど増えて、改めて自分の毛髪の自然な状態を直視すると、白髪に対して抱いていたネガティブなイメージが薄れてきました。これが本来の私の髪色なのですから汚いもののように扱うなんてできません。

本来、白色は、ウエディングドレスや白いページのように、これからどんな色にも染めることができる、将来への可能性を象徴する色のはずです。

髪の毛だからと言って老いと結びつけて嫌われ者にしなくてもいいのです。

自分の好きな色、明るい栗色や美しいプラチナカラーにも簡単に染めることができるチャンスがようやく巡って来たと、前向きに考えてみましょう。

*2004年 資生堂北里大学が行った研究結果により科学的に証明済みです。

 

お互いに感謝する

今フランスでは、美容院やエステティックサロン、レストランやカフェ、映画館、美術館や劇場も、生きるために不可欠でない商業活動はすべて中断されています。

確かに、生き延びるだけなら不必要なのは納得できます。

けれども、それらのものは快適な生活を営むためには、欠かせません。

私の日常生活にかかわりのある1件1件の商店やサービス、レストランや文化活動のそれぞれがいかに生活に潤いを与えてくれていたのか、さらには晴れた日に気の向くままにぶらぶらと散歩する自由の大切さを認識せずにはいられません。

外出が解禁になったあかつきには、それらに感謝し心ゆくまで味わいたいと思います。

毎晩8時になると、感染者の命を救うため、自らも病に倒れるかもしれないリスクを負いながらも身を粉にして治療に専念してくれている医療関係者に謝辞をこめて、フランス中がアパートのテラスや窓越しから拍手を贈っています。

また、スーパーのレジ係やパン屋さん、市のごみ収集車の作業員に至るまで私たちの生活維持のために働き続けてくれている労働者への感謝の言葉も耳にするようになりました。

個人主義と評されることの多いフランス人ですが、コロナ危機に直面して、これまであたりまえだったことひとつひとつの大切さが身にしみ、周囲への感謝の気持ちがあふれています。

 

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外出制限下のパリ、いつもは混雑している凱旋門の周囲も閑散としています。

 

会生活の重要さ

21世紀になり、インターネットの活用範囲がさらに広がり、パソコンさえあれば不自由しない世の中になって行くものと思っていました。

ネットショッピング、テレワーク、コロナ感染拡大のおかげで医者の遠隔診療も一気に普及しました。どんどん便利になっています。

外国で生活していても、日本の家族と顔を見ながら話ができます。

それにもかかわらず、外出が禁止されると日々の暮らしがこれほど窮屈に感じられるとは、バーチャルではなく生きた人と人との社会生活が必要なことを実感させられました。

ソシオエステティシャンとして高齢者施設で美容ケアに携わっていると、外の社会を運んできてくれると喜ばれることがたびたびあります。

女子刑務所に出向いて美容ケアをしているソシオエステティシャンもいます。

これまでの私は、それがヒューマニズムにあふれる行為であるのはわかりましたが、刑務所の中に社会生活を持ち込む意義には賛同できませんでした。

でも今なら、社会から閉ざされた塀の中で暮らしている受刑者が、生活の中に社会性を感じられることの大切さを理解することができます。

 

ここでもうひとつ、今の私を励ましてくれるシャネルの言葉を引用させていただきます。

 

« La beauté commence au moment où vous décidez d’être vous-même. »

Coco Chanel

 

あなたが自分自身のままでいると決めた時から、美しさは始まるのです。

ココ・シャネル

 

 

私は、この1ヶ月間、お化粧もお洒落もしていません。買い物に出るときに、少しは気を遣おうとも思いますが、顔をマスクで覆っているのでメイクしても仕方ありません。クリーニング店も閉店のため、自宅洗いできる洋服ばかり着まわしています。

社会から隔離され、一日中自宅に閉じ込められて、他人の目が届かない日々をずっと送っていると外見を気にしなくなってしまいました。

そのかわりに、毎朝鏡を見ながら、たっぷりと時間をかけてフェイシャルマッサージをしています。

ふと、「この鏡の中の私は誰?」と自分に問いかけてみたくなりました。

 パリ在住日本人、既婚、エステティシャン…。

私たちは日頃、職場でもプライベートでも自分に与えられた社会的役割を果たしています。

職場で重要な役職についている人は、その責任が生活の中で大きな比重を占めていることでしょう。

妻であり、もしくは母親でもある家庭での役割を担っている女性もいます。

そしてあなたは、恋人や友人にとっての大切な誰かに違いありません。

それらすべてかもしれません。

いつも周囲の期待に応えるように、周囲から評価されるように精一杯努力していることでしょう。

それらの役割から解放された素顔のあなたはどんな女性なのでしょうか?

冒頭のシャネルの名言とは矛盾しているようにお感じになるかもしれませんが、「自分自身のままでいる」ということは、何もしないことではありません。

他人の目を通してではなく、自分で自分に向き合い、自分はどんな女性なのか、まだ隠れている本来の自分の魅力を引き出さなくてはいけません

美しくあるとは、年齢や流行、周囲の目に惑わされて、無理することではないとシャネルは教えてくれているのです。

自分の好みや気分に合うものを身に着けて、自分の個性に自信をもって生きていく女性はきっと美しいにちがいありません。

 

 

外出制限措置の延長

マクロン大統領が5月11日まで外出制限措置の延長を宣言しました。

 

隔離期間中は、髪を染めずにこのまま自然の成り行きを見届けたいと思います。

そして社会生活に復帰することが決まったら、その時には染めるかそれともグレイヘアに移行するのか決めたいと思います。

 

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エッフェル塔の周囲も人通りがありません。     france3-regions.francetvinfo.fr