ちょうどいい具合にマンゴーが熟してきたので、柔らかい果肉をスプンですくって口に含みました。まったりとした甘みと酸味が絶妙なバランスのフルーティな味…を感じることができません。
もう一口食べてみましたが、酸っぱいわけでも苦いわけでもなく何も味がしません。
紅茶を口にすると、こちらは明らかに味も香りも色までいつもと異なります。
コロナウイルスに感染すると、食べ物の匂いも味も感じなくなると報道されています。
毎日食事をしながら、「今日も大丈夫」と自分の健康状態をチェックしているので
「ひょっとしてこれが例のコロナの症状かもしれない」
恐る恐るイチゴも食べてみました。
甘酸っぱい味覚を感じたので、安心しました。
たまたまマンゴーが傷んでいただけのようです。
落ち着いて考えると、紅茶の味については、思い当たることがあります。
私の毎日は、朝から晩までコロナウイルスに100%支配されているので、ついつい疑心暗鬼に陥ってしまいました。
パリの水道水は本当に安全?
パリ市は日頃から、水道水は飲用に適していると公言しています。
コロナウイルスの感染拡大当初、
「水道水から消毒の匂いがする」
「薬っぽい味がする」
「コロナウイルスが混入しても大丈夫なように消毒用の塩素の量を増やしている」
とまことしやかな噂が流れました。
パリ水道局は、「パリの水道水は三段階にわたる殺菌消毒を施しているため、いかなる病原菌からも汚染される心配はありません。安心して飲めます。コロナウイルス感染拡大時にも、塩素の量は追加していません」
と発表しました。
水道水の味の変化は、危機下におけるストレスによるものなのでしょうか?
(地方によっては、塩素を増量したところもあるようです)
いくら行政が国民の不安を払拭しようとしても、パリジャン、パリジェンヌはボトル入りミネラルウオーターの買い占めに走りました。
というわけで、私が長年ずっと飲み続けているボルヴィックが近所のスーパーで在庫切れになってしまい、たまたま残っていたヴィッテルを購入しました。
先ほどの紅茶の味と香りの変化は、ミネラルウオーターの種類の違いによるものなのです。
いくら成分上は飲用に適しているといっても、水道水は塩素を含む上に硬水なので美味しいとは言えません。
パリに来たばかりの頃、そうとは知らずに水道水で緑茶を淹れ、深緑色の茶色に驚いた時のことを久しぶりに思い出しました。
緑茶の比較
左:モンルークーで淹れた緑茶は、きれいな黄緑色、軽い苦味もある爽やかな味
右:水道水で淹れると 色が濃く、強い苦味がでる
私がボルヴィックを愛飲している理由は、一番口に合うからです。
そのまま飲んでもおいしいですが、紅茶や日本茶を淹れると、色も香りも味もすべてにおいて他のミネラルウオーターとの違いがさらによくわかります。
私はめったにコーヒーを飲まないので気づきませんでしたが、コーヒーは硬水で入れると苦味が増すので、好みによって好き嫌いが分かれるようです。
水道水で淹れた紅茶
表面に薄く白いものが浮かんでいます。
30分後:表面にカルシウム等ミネラル分が浮かんでいるのがよくわかります。
ボルヴィックで淹れた紅茶
紅茶の色が明るく透明感があります。
30分後の状態です。
水道水と軟水で淹れたお茶を比較すると、見た目だけでなくお茶の味も異なります。
ミネラルウオーターの特徴
スーパーマーケットで販売されている一般的なものは以下の通りです。
Mont Roucousモンルークー:軟水、ミネラル分が少ない。未発達な腎臓に負担がかからないように、乳幼児の水分補給のために推奨されている。
Volvic ボルヴィック:軟水、日本の飲料水に一番近い味といわれています。
Evianエヴィアン:硬水、硬度はあまり高くありません。 日本でもお馴染みですね。
Vittelヴィッテル:硬水、一口飲むと軟水との違いがよくわかります。
Contrex コントレックス:超硬水、モデルが好んで飲む水として日本でも有名。
Hepar エパー: 超硬水、カルシウム、マグネシウムの含有量が非常に多い。
Badoit バドア: 天然微炭酸水、硬水
Perrier ペリエ: 天然炭酸水、硬水。炭酸の刺激が強い。
硬水と軟水の違い
フランスと異なり、日本の水道水もミネラルウオーターもほとんどが軟水に分類されます。
皆さんの中には、海外旅行先で、水道水を飲んでお腹をこわした経験のある方もいらっしゃるかもしれません。
旅行中の体調の変化や、場合によってはその国の衛生事情も関係してきますが、ひょっとしたら普段は飲み慣れていない硬水を口にされたせいかもしれません。
水中のマグネシウムイオンとカルシウムイオンの含有量が多いものを硬水、少ないものを軟水と分類しています。
では、硬水は体に悪いのでしょうか?
いいえそうではありません。
現代人の健やかな生活に必要なミネラル分を豊富に含むフランスのミネラルウオーターは、その健康、美容効果に注目され、最近は日本でも輸入販売されているほどです。
私は、日本で生活していた頃は、便秘症のため、繊維質を多く含む食品をできるだけ食べるように心がけていました。
フランスに住むようになってからは、カルシウム、マグネシウムともに含有量が多く「スリミング・ウォーター」として有名なコントレックスや、さらに硬度の高いエパーの痩せる効果を試すために飲み始めました。
それまで私が飲み慣れていた水と比べると、口に含むとまず味がするのを感じます。
これがミネラルの味。飲み込む際にはのどにひっかるような重みのある飲みごたえのある水でした。
すっきり、さっぱり、喉ごし爽やかな、日本の美味しい水との違いは一口ですぐにわかります。
本当に痩せるのか期待に胸をふくらませ、エパーを飲み続けることにしました。
ところが2日後にはお腹が痛くなり続いて下痢を起こし、私のダイエットは中断になりました。
その後はエヴィアンやボルヴィック等あまり硬度の高くない水を飲んでいましたが、それでも数か月後には私の便秘は自然に解消されていきました。
これはミネラル分が豊富なフランスの水のおかげだと思っています。
肌に潤いを与える効果?
エステティックサロンのお客様に、
「お肌のために日頃どのようなお手入れをされていますか」と尋ねると
「保湿のために水をたくさん飲んでいます」
とか
「お肌の潤いが足りませんね」とお話しすると
「毎日ミネラルウオーターを1.5リットル飲んでいるのに、足りないのかしら? もっと飲まなくてはいけないわ」
と真面目にお答えになられます。
どうやらミネラルウオーターをたくさん飲めば飲むほどと、肌が潤うと信じていらっしゃるようです。
確かに、私たちの体の60~65%は水分で構成されています。
そのうち、毎日およそ2.5リットルの水分を排出しているのですから、生命を維持するためには同量の水分の補給は欠かせません。
1リットル程度は食事から摂取できますから、1日当たり最低でも1.5リットルの水分を摂取するように推奨されているのはそのためです。
カルシウムは、骨や歯を形成し骨折や骨粗しょう症の予防する働きがあります。それ以外にも心臓の動きや血液の状態を正常にして高血圧や動脈硬化の予防もしています。
マグネシウムは、体内でのカルシウムの働きを助け心臓や神経の機能を正常に保つ働きをしています。マグネシウムは神経の興奮を鎮める働きもあるので、不足すると些細なことでもイライラするようになります。また疲れやすくなることもあります。
その上、腸内では、水の分子と結びつき便を柔らかくして排便を促します。
私が、超硬水を飲んで下痢を起こしたのも納得できます。
便通が改善され規則正しいお通じが得られると体内の老廃物が滞ることなく排泄されるため、体の中からきれいになり、お肌の新陳代謝も高まり、くすみや吹き出物のない色つやの良い肌になります。
ミネラルウオーターを飲み続けると肌がきれいになるのは、事実であることがわかります。
昼間、コーヒーや紅茶、清涼飲料を口にする代わりにミネラルウオーターを飲んでいる場合、さらに健康に良い影響があります。
コーヒーや紅茶のようにカフェインを含む飲み物には利尿作用があるので、水分補給をした以上に排泄してしまい、体は水分不足に陥ってしまいます。
また、ほとんどの清涼飲料には、多くの糖分が含まれています。それらは体内に蓄積されてむくみや肥満の原因になります。
職場でランチ後のコーヒーの代わりにミネラルウオーターをコップ1杯、午後、気分転換に缶ジュースを飲むかわりにまた1杯飲むことを習慣づければそれだけで健康状態が改善されるのがわかりますね。
私の10年来のエステのお客様の中に、ずっとスリムな体型を維持していらっしゃるマダムがいます。食べ過ぎないように何か特別なことをしていらっしゃるかお尋ねしたところ、
「お腹がすいた時には、まず水を飲むことにしている」とのことでした。
確かにバドアやペリエのようなガス入りのミネラルウオーターを飲めば、炭酸ガスによって満腹感が得られて食べ過ぎを抑制することができます。
私は、レストランでの食事の際は、食べ過ぎないためにいつも炭酸水を飲むようにしています。
硬水、軟水 肌に良いのはどっち?
硬水を飲むことで、現代人に不足しているミネラル分を体内に採り入れることのでき、健康維持に役立つことは先ほどお話しいたしました。ダイエット効果も得られる可能性もあります。
さて、お肌に潤いを与える効果は本当でしょうか?
体の中からきれいになれば、当然肌も美しい輝きを取り戻せます。ただし、水をたくさん飲むだけで、肌の表面の水分量が増えるかと聞かれると、エステティシャンの立場からは、それだけでは十分であるとは思えません。
硬水は肌に直接触れると、肌荒れや乾燥を引き越します。
洗顔や洗髪、シャワーで全身を洗ってそのままにしておくと、肌はツッパリ、髪はパサパサになり、いつの間にか脚の皮膚は粉が吹いたようになってしまいます。
透明のガラスコップの表面にいつの間にか水滴が白く残り曇ったガラスになってしまいます。お鍋の底も白くなってしまいます。
これは、硬水の中に含まれているカルシウム等のミネラル分が付着しているからなのです。お肌にも同様のことが言えます。しっかりとタオルドライした後すぐに、化粧水や乳液等でケアをしないと、すぐに乾燥してしまいます。
日本で生活していると、水はナチュラルでニュートラルなものという認識でしたが、フランスではそうではないのです。。
内側からだけでなく、外側からも肌を保湿し、栄養分を与え、外的刺激から保護するために、化粧品を使って日々のお手入れも行ってこそ、潤いのある美しい肌を保つことができるのです。
パリでは、日本女性の肌はキメがそろい、すべすべの陶器のように美しいと評判です。日本の軟水のおかげもあるでしょう。
年齢とともに肌の水分量は減少します。そのため若いころと同じようにすべすべ肌に見せるためのベースメイクを続けていると、午後からは小じわの目立つ、疲れた顔になってしまいます。
成熟した肌は、ファンデーションを丹念に均一にのばしても、時間がたてば肌は乾燥し、パウダーの粒子がシワの間に入り込み、実際のシワをさらに目立たせてしまうこともあります。
朝お化粧を始める前にまず、肌の保湿をしっかり行いましょう。
特に、シワの目立ちやすい目元は、指の腹で軽くマッサージする要領で専用のクリームをしっかり塗布しましょう。次に、気になるシミはコンシーラーを部分的に使用し目立たないようにしましょう。顔全体は、ファンデーションかパウダーでできるだけ薄く覆いましょう。
パリのマダムは、ファンデーションを薄めに塗って、陶器肌よりも少しテカリのあるしっとり濡れた感じの肌作りをしています。お肌の水分量は年齢とともに減少しているのを承知しているので、乾燥してしぼんだように見せないために、しっとりとふっくらした肌に見せるように工夫しています。
まさに水も滴るいい女肌のことです。
もし、午後から目元の疲れが目立ってきたら(20代ではないのですから仕方ありません)、軽くコットンで肌の表面の汚れをふき取ってから目元の部分だけアイクリームをつけ足してください。ファンデーションをこってり塗っていないので、お化粧直しも素早く簡単にできますね。
これだけでも、生き生きした目元を一日中保つことができます。
ぜひお試しください。
結局、硬水と軟水どちらが私たちをきれいにしてくれるのでしょうか?
日本の水は軟水なので、生活には、水道から流れ出る軟水を使用し、飲料水はお気に入りのミネラルウオーターを常備しておくと、体の中からも外からも美しくなれること間違いありません。
私は、ボルヴィックをメインに、紅茶はボルヴィック、日本茶はモンルークー、食事の時は硬水の炭酸水を愛飲して、バランスよくミネラルを採り入れるようにしています。