千代に八千代にパリジェンヌのように美しく

パリのエステシャンがあなたに伝えたい、年を重ねても美しいパリジェンヌのきれいの秘訣

パリジェンヌの必需品 手作りマスクでお洒落を楽しむ

 

随分前の事ですが、女性雑誌にエリザベス女王が腕を痛められて、エルメスのスカーフを三角巾代わりにしていらっしゃる姿が掲載されました。

当時は、「さすがは、女王様」と称賛したものでした。

でもパリではよく似た光景に出くわします。

クリスマス休暇明けや冬休み明けには、スキー場で傷めたと思われる腕をスカーフやマフラーでつっている人をたびたび見かけるものです。

エスニック調だったり、エルメス調だったりと色とりどりです。

若者に限らず、同様にしている年配のマダムに遭遇することも珍しくありません。

確かに、シックな装いに白の三角巾では、せっかくのお洒落も台無しです。

「さすがはパリジェンヌ。怪我をしていてもお洒落の手は抜かないのね」と、

感心したものでしたが、よく考えてみるとそれぞれが手持ちのスカーフを応用しているほうが自然なことですね。

どんな時も自分なりのお洒落を犠牲にする必要はないのです。

 

 

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マスク着用の義務化

 

数年前、フランスのニュ-ス番組では、

「日本では、深刻な大気汚染のためマスクなしでは外出できません」

と、花粉症やインフルエンザ予防のためにマスクをしている様子を紹介していました。

 

私は、真冬気温が零下になると、最寄りの地下鉄の駅まで10分ほど歩くだけでも冷気で胸が痛くなるため、日本から持ってきているマスクをすることがあります。

そのままはずすのを忘れて地下鉄に乗ってしまい、周囲の乗客からの鋭い視線を感じたことがあります。

悪い伝染病に侵されていると思うのか、顔を隠していると何か悪さをたくらんでいると思うのか、もしくは、単に見慣れていないためでしょうか。

 

とにかく、パリの街中でマスクを着用していると好奇の目で見られました。

 

日頃から、家族や友人のみならず、職場の同僚や知人に至るまで、挨拶に頬にキスをしたり抱き合ったりする習慣のあるお国柄のため、顔の半分近くを覆って目の前の相手とのバリア-を築くマスクは、受け入れがたいものなのです。

それだけでなく、フランス語は、日本語に比べて、口を上下左右に巧みに動かして発音する言語のため、マスクの着用が会話の障害になることも関係あると思います。

 

ところが、大変! 

コロナウイルス感染の世界的流行に伴い、パリではマスクの着用が義務付けられました。

外出制限措置が解除された5月初旬は、地下鉄などの公共交通機関に乗車する際や、スーパーマーケットや病院等の屋内のみに限られていました。

しかし夏休みになってから、パリジャン、パリジェンヌの移動や外出が活発になるに従い、若年層を中心に感染者が増加し始めたのを危惧したパリ市は、屋外でもマスク着用を義務付ける措置を発表しました。

 

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 8月15日現在、パリ地図の紫色に塗りつぶされている地帯では、歩行者にマスク着用が義務付けられています。

 

折しも、時には40度に到達することもある、うだるような猛暑が続いているこの時期、熱中症を招く恐れも懸念されることから、

「外にいる時までマスクをする必要があるのか?」

と連日、ニュース番組では医療関係者が討論を繰り広げています。

 

また、使い捨てマスク1枚当たりおよそ60~70円(一時は100円以上の高値でしたが、安定供給のおかげで値下がりしました)

1日2~3枚使用すると仮定すると(湿ってくると効果が減少するため4時間おきに取り換えることが推奨されています)

1ヶ月当たりの出費もばかになりません。

使い捨てマスクの使用が長引くに従い、企業の経費や個人の家計を圧迫していることも問題になっています。

 

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3月のコロナウイルス流行当初は、フランス中でマスクが不足していたこともあり、次第に布製マスクも販売されるようになってきました。

使い捨てマスクよりも経済的。かつ、洗って何度でも使用できるのでエコロジーにも役立つことから次第に布製マスクの使用も一般化してきました。

 

手作りマスクの流行

そして、日本同様にパリでも、マスクの手作りが流行し始めました。

意外に思われるかもしれませんが、パリでは、いまだに街のあちらこちらで昔ながらの手芸専門店を見かけます。

布地や糸、ボタンやファスナーだけでなく、お裁縫に必要なありとあらゆるものが天井に届く棚まで所狭しと並べられています。私は、今のところはボタン付け用の糸を買うくらいですが、レトロな店内で、繊細なレース生地や装飾を施されたボタン一つ一つを眺めていると、手作りの意欲がわいてきます。

手芸は、老後の暇つぶしだなんて、とんでもない誤解をしていました。

来店客は私よりずっと若い女性ばかりです。

 

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余談ですが、ある日自宅周辺を歩いている時に、JANOMEJUKI、 BROTHER の文字が目に留まり、立ち止って店内をのぞいてみると、そこはミシンの専門店でした。

日本製のミシンは、パリでも人気です。

私は小学生の頃とても太っていたので、地元の洋品店ではなかなか可愛い服が見つかりませんでした。洋裁好きの母が、当時はまだ足ふみ式の蛇の目ミシンで手作りしてくれたことを懐かしく思い出しました。


自分のセンスに沿わないものや、他人と同じものを身に着けるのを好まないパリジェンヌは、当然、市販されている青色の医療用マスクに満足できるはずはありません。

お気に入りの布地で作られた手作りマスクを着用することが流行り出したのは、金銭的な事情やエコロジーの観点からだけではなく、おしゃれのためでもあるのです。

毎日洋服を着替えるように、それに合わせて布製マスクの色柄を選ぶようになってきたのです。

今やパリの街中を闊歩するためには、マスクは必需品なのですから、デザインにこだわるのも当然ですね。

 

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マスクの不足が危惧され始めた当初、ルイヴィトン・グループやケリング・グループ(イヴサンローランやグッチを傘下に収める)は、マスクや医療従事者用の白衣の製造に取り掛かりました。

いずれの高級ブランドも、商業目的ではなく病院や高齢者施設への提供を目的とした社会貢献活動です。

 

現在は、品不足は解消されましたが、マスク着用が日常化するに伴い、近い将来ルイヴィトン社のモノグラム模様のマスクやシャネルマーク柄のマスクがバッグと合わせて販売される日が来るかもしれません。

ひょっとすると、次回のパリコレに備えて、もう製造を始めているかもしれませんね。