千代に八千代にパリジェンヌのように美しく

パリのエステシャンがあなたに伝えたい、年を重ねても美しいパリジェンヌのきれいの秘訣

パリジェンヌのお気に入りアイテム マルセイユ石鹸

 

今から20年以上前のこと、通販のカタログに紹介されていたマルセイユ石鹸に心惹かれたのがそもそもの始まり。フランス製のその石鹸は、木箱に入って、2.5キロで約1万円とお値段も高め。

オリーブオイルから作られた、顔・体・髪まで全身洗える石鹸。

高級品として売られていました。

当時は、イタリア料理の人気に伴い、ヨーロッパの高価なオリーブオイルを口にするようになったこともあり、このオリーブ石鹸もさぞかし素晴らしいものに違いないと私の興味をそそりました。

  

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それから時は流れ、数年前、夏のヴァカンスに南フランスを訪れた時に、あの通販で見かけたマリウス・ファーブル社(社名はしっかり記憶していました)の工場見学に参加する機会がありました。それ以来すっかりマルセイユ石鹸のファンです。パリでは、高級デパートのボンマルシェや街のドラッグストアで、100g、200g、400gのキューブのものが、数百円の手ごろな価格で売られています。

 

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創業者のお孫さんから、石鹸の製造工程を順を追って説明を受けながら工場内を一周しました。近代的な工場で大量生産され、世界中に輸出されているものだと思っていたので、あのマルセイユ石鹸がこのような小さな町工場で作られ、遠く離れた日本まで届けられるとは意外な発見でした。

マリウス・ファーブル社は、120年前から続く家族経営の会社で、現在は創業者の曾孫二人が継承しているのです。

その上、曾祖父マリウス ファーブル氏の時代からの伝統製法にこだわり、今でも毎日大釜で石鹸を炊き上げているのです。

 

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原料は、植物性油脂(オリーブオイル、ヤシ油脂)、 苛性ソーダ、塩と水のみで、およそ10日間かけて原料を炊き上げます。

石鹸職人は、その過程ごとに、今でも一回一回自分の舌で味見をして満足のいく出来上がりかどうか確認しています。

1世紀以上前、薪や石炭で釜を熱していたころとは違い、今では温度調整も加熱時間も自動設定されていますが、それでも最後は、熟練した職人さんの舌で判断されるのです。

 

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子供の頃、お風呂で石鹸の泡が誤って口に入ってしまったときに経験した、あの苦い味を覚えているので、仕事のためとはいえ、職人さんは毎回毎回さぞかし苦痛を伴いながら石鹸を口になさっているのだろうと想像しました。

十分に炊き上がっていないと舌に刺すような刺激を感じるそうですが、マルセイユ石鹸は、100%天然の原料から作られているので、出来上がりは、味わいもまろやかでほんのり塩味がするとのこと。

 

本当かしら……。

 

 

さてその次は、出来立てほやほや深緑色のペースト状の石鹸を、床のコンクリートに正方形に仕切られた大きな型に流し込みます。私の実家の周囲の農家は、田植えの時期が近づくと、まず田んぼの土を平らにならし、水を張って苗が根付くように準備をしていました。その懐かしい田園風景が思い浮かび、マルセイユ石鹸が身近に感じられるようになりました。

  

南フランス特有の北風、ミストラルが吹き付ける日には、窓を全開にして、48時間かけてゆっくり自然乾燥させます。購入するたびに、乾燥具合によってはまだ少しだけやわらかくて、色も濃い緑色で、バスルームに置くと、オリーブの豊かな大地の香りで満たされます。マリウス・ファーブル社以外にもあと3社、伝統製法でマルセイユ石鹸を製造している会社がありますが、他社は、オーブンの中で熱風にあてて短時間で一気に

 乾燥させるため、出来上がりは薄緑色で一様に固く、オリーブ特有の香りが少ないのが残念です。

 

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見学の最後に、小さいキューブから2.5キロのバーまで、出荷を待つ完成品が陳列されている木棚の前で、この小さな町工場から世界中に正真正銘made in Franceのマルセイユ石鹸が輸出されていると、ガイドをしてくださったお孫さんは、誇らしげに話してくださいました。

「この2.5キロのバーが一番売れるのは、日本なのですよ」と付け加えました。

なんと、工場の出口付近には、見覚えのある、あの通販カタログの1ページが貼られていました。

 

工場見学の後、夫の驚きをよそに、例の木箱入りのものを購入したのは言うまでもありません。だって、私は日本人ですもの。

 

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さて、お味の方はというと……と言っても食べるわけではありませんが、全身に使えるのみならず、歯磨きにも使えると説明を受けたので、早速試しました。軽く濡らした歯ブラシでマルセイユ石鹸を何度もこすってから、恐る恐る口に含んでみると、意外なことに苦くありません。舌触りもまろやかで、当然のことながらとてもよく泡立ち、かすかな塩味が口の中に残りました。歯磨きとしても使えるのは本当でした。

 

 

残念なことに今では、フランス国内で販売されているマルセイユ石鹸の90%以上は、トルコや中国で製造されていると、先日ニュースで取り上げられていました。古くは数百年前から製法が継承されている、フランスの大切な遺産であるにもかかわらず、名称使用に規制がないために、誰もが「マルセイユ石鹸」の名を使用できるのが原因だとか。当然品質も粗悪のものが出回っているので、購入の際はくれぐれも注意するよう喚起されています。

口に入れても大丈夫なのは、正真正銘マルセイユ石鹸のみですからね。

 

 

それでも、フランス人のエコロジ-への関心が高まるにつれて、昔ながらのマルセイユ石鹸が見直されてきています。

100%天然の原料から造られ、無添加でお肌に優しいだけでなく、環境保護にも役立つなんて一石三鳥ですから。

 

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その影響か、ついに昨年末、パリのマレ地区にマリウス・ファーブル社の直営店がオープンしました。店内に一歩足を踏み入れると、オリーブオイルの香りが漂い、あの南フランスの石鹸工場に舞い戻ったような気がしました。

定番の石鹸のみならず、化粧品や、キッチンの油汚れから、床磨きや窓拭きまで家じゅうの掃除に使える黒い液体石鹸などすべての製品がパリで手に入るのです。

 

パリジェンヌも大好きなマルセイユ石鹸

機会があればぜひ一度お試しください。