20年以上前の日本でのOL時代、私の綺麗に欠かせない化粧品がふたつありました。
まずひとつ目は、クレ・ド・ポーのファンデーション。
当時の私は、夜更かしがたたって寝不足でしたが、それにもかかわらず、このファンデーションのおかげで、私の肌は一日中くすみしらずでした。
とりわけ、時間がたつにつれて肌に溶け込むようになじんでいき、陶器のように仕上げてくれる質感は他ブランドに追従を許さない秀逸の一品でした。
「ファンデーション何使っているの?」
同僚から数えきれないくらい質問されました。
ふたつ目は、ゲランのメテオリット。
宝石箱のようなパッケージを初めて手にしたときのときめきと、その箱を開けた瞬間目にする一粒一粒の宝石のような珠の輝きとお仏蘭西の香りは今でも覚えています。
仕事を終えてからの待ち合わせの前に、七色の筆を使ってフワッとひと塗りするだけで、自分の肌に真珠のような輝きが生まれ、私にとってそれはまさに魔法の小箱のようでした。
口紅でも、マスカラでも、アイシャドウでも、それを一筆肌にまとうだけで自分の綺麗をワンランク上に導いてくれる、自分に自信をつけさせてくれる、とっておきの日のための化粧品を一つ持っていると心強いですね。
新製品が次々と開発される美容業界で、30年の時を経た今でも、女性から支持され続けている化粧品。女性の肌を美しく魅せるためになくてはならないアイテムに間違いありません。
「まさに色の白いは七難隠す」のことわざ通りです。
しかしながら、その間にパリに移り住んだ私は、もはや色白ではいられなくなってしまいました。
フランスの中心部よりも北に位置するパリの夏は短く、必ずしも晴天に恵まれるとは限りません。長くて暗い冬を耐え忍んだ末にようやく待ちに待った心地よい春の陽光が到来すると、カフェのテラスや公園に出て、日差しを浴びずにはいられないのです。
フランス在住の成人男女の80%は、皮膚が紫外線を浴びることで合成されるビタミンDが不足していることも、日光浴を促進しているのかもしれません。
かくいう私もその一人で、肌の老化や皮膚がんといった紫外線の弊害も理解はしているものの、骨粗鬆症を防止するためには、骨を丈夫にする働きのあるビタミンDの合成は不可欠なのです。
理屈はとにかく、太陽が燦々と降り注ぐ晴れの日は、薄暗い曇りの日よりもずっと気分がいいものです。
その上、夏のバカンス明け、日焼けした肌を誇らしげに見せびらかすパリジェンヌたちが、断然美しく見えるのは否定のしようがありません。
パリに住み始めたころは、日焼け止めやファンデーションで白くみえるくらいしっかり肌を保護していたものの、「郷に入っては郷に従え」のごとく、私もすっかり日焼け派に仲間入りしてしまいました。
夏服を着ると隠しようのない二の腕やふくらはぎが、心なしか引き締まって見えるのがうれしくて、ついついやめられなくなってしまいました。
どんなにスキンケアに気を使っていても、シミやしわは増えつつありますが、色白を諦めて、日焼けした肌を受け入れるようになると、小さな肌の欠点は気にならなくなりました。肌色に合わせて、ファンデーションも濃い色を選ぶので、薄塗りでも自然とシミやそばかすは目立ちにくくなります。
そして、ここ数年は、メテオリットの日焼けバージョンともいえる、多色パウダーがモザイク状になったテラコッタ・ライトを愛用しています。これもさっと一筆塗るだけで、薄っすら日焼けしたように肌につやが出て、光の反射で皺もシミも目立たなくしてくれるので、一年中重宝しています。
まさに今の私は、「色の白いは七難隠す」転じて「日焼けした肌は七難隠す」を推奨しています。
日本女性は、本来の肌色よりも明るい色のファンデーションを好みますが、パリジェンヌは、たいていは自分の肌色よりも濃い色を購入するのですよ。私の働いているサロンでも白人向けの薄い色よりも、オークル系の方がよく売れるのですから。
もちろん、私のこの変化には、日仏生活習慣や美意識の違いもあリますが、年齢をかさねるにつれて、自分相応を受け入れることができるようになってきたことが大きいと思います。
もう若くないからと諦めたわけではなく、欠点も含めて今の自分を受け入れ、自分に相応しくありたいと心がけているためなのです。
50年以上生きているのですから、生まれたての赤ちゃんのようなつるつるすべすべのシミも皺もない肌には戻れないのは当たりまえ。
それよりも、今の自分を輝かせるすべを身につけるようにしています。
今日の私は、昨日より若くなることはできません。
でも、明日の私は今日よりキレイになることはできるのです。
日焼け肌をぜひお一度試しください。