千代に八千代にパリジェンヌのように美しく

パリのエステシャンがあなたに伝えたい、年を重ねても美しいパリジェンヌのきれいの秘訣

寝不足は美容の大敵!   睡眠薬? それとも ハーブティ-?

 

 パリの今年の春は、天候不順が続いています。

5月に入ってからも、地方では降雪がありました。

例年なら、長い冬の間にたるんだ体を夏に向けて少しでも引き締めるために、そろそろプ-ルに行きたいところですが、こう寒くては、風邪をひいてしまいそうです。

今朝もコートを着て出勤しました。

冬の間、体を温めるために愛飲しているハーブティーを、毎日欠かせません。

 

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エステティック専門学校の学生の頃、国家試験が数か月後に迫ったある日の授業で、

 

「試験当日、緊張のせいで失敗しないために、あがり症の人は、今のうちから不安を鎮める薬を何種類か試しておくようにしてください。 

直前になってからいきなり使用すると、効き目が強すぎたり、眠くなったりするので、前もって調整しておくようにしてください。

ストレスに負けて、実力が発揮できなくなるようなことがないように、しっかり準備しておいてください」

 

と担任の先生から、精神安定剤を試すようにアドバイスがありました。

試験のために精神安定剤を使用するなんて……。

フランス人は、よほどストレスに弱いのか? 

それとも、よほど薬が好きなのか? 

 

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2000年当時は、フランス人一人当たりの薬の消費量は、ヨーロッパ1位でした

その後、他国の消費量が増大したため、医薬品全般では、平均並みに落ち着いたようですが、睡眠薬抗不安薬抗うつ剤の部類は、引き続きヨーロッパトップクラスの消費量です。

フランス女性、4人に1人は服用しています。

 

パリにはいたるところに薬局があり、いつも列ができていることから、薬好きぶりはよくわかります。

 

フランスの薬は、恐ろしいくらいすぐに痛みが消え、とても効果があります。

ぎっくり腰になった時も、帯状疱疹になった時も、痛みはすぐに楽になりました。

でも、私の体には作用が強すぎるので困ってしまいます。

胃の調子が悪くなったり、アレルギー症状が出たりと、結局体調不良は長引いてしまいます。

 

症状の改善には効果的! 

でも、健康にはよくなさそう! なのです。

できるだけ病気にかからないのが一番ですよね。

 

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パリジェンヌも私と同様の考えなのか、昔ながらの体にやさしい植物療法も根強く支持されています。

私がハーブティ-を購入している薬草販売店は、朝出勤前に立ち寄っても、お昼休みに行っても、小さな店内はいつもお客さんでいっぱいです。

天井まで壁一面の棚は、ハーブや精油で埋め尽くされています。

 

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現在の私のお気に入りは、二種類あります。

まずは、体の冷えを防ぎ、免疫力を高める効果のある

Tisane Antifrisson 寒さ予防のハーブティ です。

ロ-リエ、ユ-カリ、ジャコウソウの葉、

シナモンとムラサキバレンギクの樹皮、

クロ-ブ、そしてヨ-ロッパアカマツの芽が混合されています。

 

冷え性を改善し、免疫力を高め、風邪などの感染症にかかりにくい丈夫な体を作るとともに、殺菌効果もあり、ウイルスや細菌が体内に侵入するのを防いで病を予防する効果があります。

 

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煎じたハーブの見た目は、少々ワイルドですが、素朴な薬草の香りが、いかにも体によさそうで気に入っています。

 

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漢方薬のような味なので、説明書には、蜂蜜を入れて飲むように推奨されていますが、私はそのままで平気です。

このちょっと苦い味がくせになります。

 

 

もう一つは、Tisane du Soir  夜用ハーブティ- です。

夜帰宅後は、日本茶をいただきたいところですが、年齢とともに、食後にお茶やコーヒ-を飲むと眠れなくなってきましたので、カフェインは控えるようにしています。

 

夜用ハーブティには、

ボダイジュの苞葉、

橙オレンヂ、ラヴェンダ-、そして夏白菊の花、

メリッサの葉がブレンドされています。

 

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こちらの茶葉は、黄色や黄緑色で、優しい香りがします。

爽やかなすっきりした飲み心地で、就寝前にほっと一息つくことができます。

 

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不安やストレスを緩和するリラックス効果や、心を落ち着かせる鎮静作用と、筋肉の緊張や疲れを和らげる作用で、安眠へと導いてくれます。

 

50代にもなると、体力の衰えを感じ始めますので、しっかりと睡眠をとりたいですね。

それにも関わらず、夜中にトイレに行くために目が覚めて、思うように眠れないというお客様のお声をよく耳にします。

 

皆さんもそんなお悩みはありませんか?

 

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睡眠不足は美容の大敵ですよね。

 

そこで、夜中に目が覚めてしまったら、お肌に良いことに利用しませんか?

カサカサのお肌にもう一度クリ-ムを塗って、保湿をしてみてはいかがでしょうか?

これは、あるお客様が実践されていることです。

彼女は、夜中にアイクリ-ムを重ねづけして、顔の中でも肌が薄くて皺やたるみが出やすいデリケートな目元部分のケアを、入念にしていらっしゃいます。

 

 

私は、寝つきが悪く、睡眠不足になりがちです。

寝入ってしまえば夜中に目が覚めることはあまりありませんが、まれに目が覚めてしまった場合、再び寝付くことはできません。

そんな時には、私は、唇にワセリンを塗りなおしています。

就寝前に必ず塗っても、朝起きると唇はカサカサになっているのですから。

 

皆さんも、パリジェンヌのキレイのためのアイディアを見習ってみませんか?

 

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 Herboristerie du Palais Royal

11 rue des Petits Champs 75001 Paris

パリで東洋の美 再発見

 CHANELChristian Dior のアイシャドウの新色。

日本人のセンスとは違う鮮やかな色や意外な色の組み合わせに魅かれて、つい購入してしまい、でも結局は2~3色しか使わなくて、残りの色は一度も塗ったことがない! そんな経験はありませんか?

 

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フランス人と日本人では、瞳の色はさることながら、瞼の構造も異なり、アイメイクをする部分の広さが比べ物にならないのは見ての通りですね。

普段はナチュラルメイクのパリジェンヌも夜の外出時には、めいっぱい(目一杯)お化粧します。広い瞼に、骨格に合わせて陰影をつけ、目元を際立たせるように念入りにメイクをするので、4~5色のアイシャドウがバランスよくきちんと収まるのです。

お化粧映えして何とも羨ましい限りです。

 

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私も見習わなくては!と思い、エステ学校時代は、授業で学んだパリジェンヌ風アイメイクを試行錯誤してみたものでした。

でも、日本人の瞼の二重部分は、目を開くと奥に入ってしまうため、自分の顔を鏡で見るとそれほどではないと思っても、他人から見ると瞼の動きによってはかなり濃くパンダのような目になっていました。

 

‟肌に馴染みやすいブラウンやベージュ系のナチュラルカラーを選んでグラデーションにするときれいに仕上がる”

 

日本の女性雑誌にはよくこのように書いてあります。

そんなことは百も承知していましたが、私のメイクボックスには24色のアイシャドウに加えて、青、緑、紫、金色まで10色以上のペンシルやマスカラが揃っているのですから

当時まだ若かった私は、

 

 “私もパリジェンヌみたいになれるかもしれない”

 

と勘違いをして、使い慣れた色味だけでなく、ブルーやパープルにも手を伸ばしてみたのです。

青い瞳に強いあこがれを抱いていた私は、少しでも近づきたいと思い、青いアイライナーとマスカラで目元を強調し、パリジェンヌを気取っていました。

何とも恥ずかしい思い出ですが…。

日に日にメイクはエスカレ-トしていき、私の顔は絵の具のパレットのように色とりどりになっていきました。

 

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授業で習ったとおりに忠実に再現、色の配置は間違っていないはずなのに、悲しいことに塗れば塗るほど理想からは、かけ離れていきました。

 

 

どこがいけないのかしら?

 

答えは簡単!

どれだけ長くパリに暮らしていても、例えマドモアゼルと呼ばれるようになっても、外見がフランス人に近づくわけではないのです。

私はこれからもずっとずっと純日本人であることにはかわりないのです。

フランス人の真似をしてもパリジェンヌになれるわけではないのです。

 

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そんなある時、ギメ国立東洋美術館の前を通りすぎました。

 

東洋の美術品ってどんなものが展示してあるのかしら?仏像?壺?浮世絵?

恐る恐る中に入ってみると、館内には日本、中国、インド、アフガニスタンベトナムカンボジア、ネパール、チベットに至るまで膨大なコレクションが展示されている東洋芸術の殿堂だとわかりました。

実業家エミール・ギメが世界一周旅行の際に持ち帰った美術品をもとに宗教美術館を設立したのが始まり。西洋人の審美眼で選び抜かれた東洋の美を堪能することができました。

現地では今この時も紛争により貴重な文化遺産が破壊されている状況から鑑みるとこのコレクションは今後さらに東洋美術研究の重要な役割を果たすことになると予想される貴重な美術品の数々でした。

 

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見学客がまばらで館内がしーんとしているため、

 

「この品のある佇まい、なんて美しいの、心が清らかになるわ」

 

熱心に仏像に見入っているマダムのため息が聞こえてきました。

私はなんだか自分の事のようにうれしく思いました。

 

日本から西洋の美(美容)を追いかけてきたにもかかわらず、思いがけずパリで仏像の穏やかな微笑みに出合い、私までもが一瞬にして東洋芸術の凛とした簡素な美しさに心を奪われてしまいました。

 

「そうだわ、私の目指すべき美はここにあふれている。フランス人の真似ごとをする必要なんてないわ」

日本人であることに誇りをもってパリで生きていこうと心に決める良いきっかけとなりました。

 

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日仏友好160年を記念して、2018年から2019年にかけて

ジャポニズム2018 響きあう魂」

日本文化と芸術の祭典がパリ並びにフランス各地で開催されました。

ギメ美術館では、「奈良 日本仏教の三宝展」と題して、奈良 興福寺の国宝金剛力士像2体と重要文化財地蔵菩薩立像1体の特別拝観が催されました。

そこで、久しぶりにギメ美術館に足を運びました。

 

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これまでにも京都や奈良の神社仏閣は、修学旅行や、大人になってからも何度も訪れていますが、これらの国宝や重要文化財をこれほど間近にじっくりと見たことはありませんでした。正面のみならず、背後に回り込んで、金剛力士像の筋肉隆々の後ろ姿までしっかり眺めることができるように展示されていました。

実際には、私と同じくらいの大きさにもかかわらず、鍛え上げられた筋肉と首や腕に浮き出た血管や、こちらをじっと睨み付ける目つきの迫力は、見るものを圧倒していました。

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地蔵菩薩立像は、その2体に守られるように中央に配置され、穏やかな慈悲深いお姿が一層際立っていました。

 

この展示室だけは、来場者が後を絶たず、フランス人の日本文化への関心の高さを実感しました。

 

パリジェンヌの大きな瞳や長い睫毛、彫の深い華やかな顔立ちに比べると、私たち日本人の顔は、平面的で表情の変化に乏しく地味ですね。

しかしながらパリでは、日本女性の美しさへの賞賛の声を耳にすることも少なくありません。

なぜでしょうか?

観音様のお顔を拝みながら、その答えがわかりました。

凛とした切れ長の瞳、控えめな顔立ちに代表される東洋の美をパリで再発見することとなりました。

 

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ギメ東洋美術館

 Musée national des Arts asiatiques - Guimet

6 Place d'Iéna 75116 Paris

 

 

 

しわもたるみも私の年輪  50歳の顔は、私の功績

 

La nature vous offre le visage que vous avez à vingt ans.

La vie forme le visage que vous avez à trente ans.

C’est à vous pour mériter le visage que vous avez à cinquante ans.

                                                                                     Coco Chanel

 

20歳の顔は、自然の贈り物

30歳の顔は、あなたの生き様

50歳の顔は、あなたの功績     ココ シャネル

 

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私は50歳を過ぎてから、首に2本くっきりとついたしわが気になるようになってきました。毎朝毎晩、顔と同様に首にも欠かさずに美容液とクリームを塗りお手入れをしてきましたが、首は絶えず上下左右に動かす部分なので、仕方がないですね。

最近は、襟元の詰まっていない洋服を着ると、このしわのせいで、顔まで老けて見えるので、ついついスカーフを巻くことが増えてきました。

冬はいいですが、暖かくなってきたらどうすればいいでしょうか?

 

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私が新米の頃、大ベテランの先輩エステティシャンに尋ねたことがあります。

「首のお手入れ専用の化粧品を使えば、本当にしわやたるみをなくすことができるのかしら?」

「一旦ついてしまった線は、完全に消すことなんてできないわ。でもね、そのために宝飾品があるのよ。素敵なネックレスをつけていれば、しわなんて目に入らないわよ!」

 

確かに年齢を重ねたパリジェンヌは耳たぶにも、首飾りにも、そして指輪も、大ぶりのアクセサリーを好んで身に着けています。これはお洒落のためだけでなく、老化をカムフラージュするためでもあるのですね。

 

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でも、日本のOL時代、

「小粒でも本物の宝石を身に着けるのが大人の女性のお洒落である」

と、女性誌で読んだような記憶があるのですが…。

細いチェーンや控えめなパールやダイヤのネックレスでは、肌のたるみやしわには勝てません。けれども大粒の宝石なんて、たやすく手に入りませんよね…。

 

ご心配なく。

かのジャクリーヌ・ケネディ・オナシスが愛用していた3連パールネックレスが実はフェイクだったのは有名な話ですね。

シャネルのロングネックレスのパールもガラス玉です。

本物でなくてもエレガントに装うことはできるのです。

大切なのは、センスのいいアクセサリーを身に付けて、自分の魅力を高めることです。

50歳を過ぎたら、自分の功績、すなわち人生の積み重ねによってつくられたしわやたるみにも誇りをもって、自分の年輪に負けないくらいに飾りませんか?

 

 

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ところで、パリジェンヌはよく瞳の色に合わせておしゃれを楽しんでいます。

ブルーの瞳に合わせてブルーのイヤリングやマフラーをすると自慢の青い瞳がさらに際立ちます。

グリーンの瞳にエメラルドグリーンのアクセサリーを身に着けるとその瞳はさらなる魅力を発揮します。

パリジェンヌは、ブルーやグリーン、ノワゼットと言われる明るい茶色、そして薄いグレー、瞳の色もさまざまなので、個性を出すことができますが、日本人は皆こい茶色か黒になってしまいますよね。

そこで、たとえば、アイシャドウや口紅の色に合わせてコーディネイトしてみてはいかがでしょうか?

もちろん、太目のシルバーやゴールドのネックレスも首や胸元の肌の衰えをしっかりカムフラージュしてくれます。

 

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もう一つの加齢による悩みである目元の肌のたるみやくすみ、くまといった皆に共通の悩みは、眼鏡をかけているとカバーできますね。

 

近眼で眼鏡を手放せなかった友人は、同世代が老眼鏡を必要とするようになった今、逆に裸眼で新聞が読めるようになってきました。

車を運転する時以外は眼鏡なしでも生活に支障はないとのことですが、ただ一つ気がかりがあり、未だに眼鏡をかけています。

なぜかといえば、眼鏡をはずすと、目元のたるみやしわが丸見えで、老けて見られるからだそうです。

長年見慣れているからでしょうが、確かに彼女のチャームポイントの赤い眼鏡がなくなると、いつものイキイキした表情は失われ、年齢相応に疲れが目についてしまいます。

毎朝10分くらい余計に時間がかかりますが、眼鏡の代わりに、入念なアイメイクを施し、頬紅と口紅をこれまでよりも赤みのある色にすることでカバーすることもできます。

最近は、黒いフレームが流行っていますが、50代からは、黒よりも赤や青など明るい色を選べば、お顔を引き立ててくれます。

服装に合わせて眼鏡もコーディネートすると、なお素敵に見えますね。

 

 

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もちろん、ウイークポイントから目をそらすだけでなく、お肌のお手入れに精を出すことも大切です。

就寝前に、きちんとクレンジングをして一日の汚れを落としてから、しっかりとお肌を労わってあげてください。

つい忘れがちな、首から顎の下にもしっかりとクリームを塗布してから、首の左右にぴったりと手のひらをつけて、下から上に首からあご下、そして頬までしっかりとクリームをなじませることを忘れないでください。次に首の中央にも同様に行ってください。

美容に関しては、努力は必ず報われます。

 

最後に、50歳を過ぎても自分の顔に自信の持てないあなたへ

悲観する必要なんてありません。今からでも十分間に合います。

 

かのヘレナ・ルビンスタイン女史はこういいました。

 

There are no ugly women, only lazy ones.

「醜い女性なんて存在しません。怠け者なだけです」

 

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もし、鏡に映った自分をきれいだと思えなくなったら、毎朝10分だけ早起きして自分の顔と向き合いましょう。

努力は必ず報われます。

人生まだまだこれからです。

怠け者から脱出しましょう。

いくつになってもエステティック

私は、パリから電車で1時間くらいのところにある高齢者施設でソシオエステティシャンの活動をしています。

 

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40年前から勤務している職員さんが、出張美容師やソシオエステティシャンがまだ存在しなかった時代、入居者女性のどうしても美容院に行きたいという願いをかなえるため、車椅子で美容院まで送り迎えしていたという思い出話を聞かせてくださいました。

長寿社会の今では需要が年々拡大し、容易に外出ができない高齢者のために、美容師が施設や自宅に出向くサービスが一般化してきました。

そのためにこの施設では数年前の改装の際に、ビューティーサロンを設置しました。週に2回、美容師が出向いています。

 

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私たちの世代とは違い、80代、90代、100歳以上の世代は、自分の生まれ育った町で学業を終えて社会人になり、結婚して家庭を築き、そして伴侶に先立たれて一人での生活が難しくなると、この老人ホームに入居します。

その昔、校庭で一緒に遊んだ小学校、中学校の同級生に再会したり、職場の同僚に再会することも珍しくありません。

思い出話をしていると、子供のころ家が近所だったとか、親同士が友人だったとか一本の糸でつながっていくことがわかります。

また、職員さんも、入居者さんが営んでいた食料品店でいつも買い物をしていたから子供のころからお顔なじみであったとか、小学生の時の担任の先生に再会したりとか、遠縁の親戚だったりとさらにどんどんつながりができていきます。

街全体で入居者120名ひとりひとりの最期を温かく見守っているという印象を受けます。ここでは、老人ホームが一つの社会を形成しており、エステティシャンも美容師もいるのが当たり前なのです。

 

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私は、リタイアされた元職員さんを中心に、入居者のご家族や友人で形成するボランティアグループの協力を得て、施設のレクリエーション活動の中にソシオエステティックを取り入れていきました。

慈善バザーの飾りつけに使う花をクレープ紙で作っている最中でした。

紙に触れることで手のひらがかさつく上に、かなり指先を使う細かい作業で、参加者は少しすると手が疲れてしまうようでしたので、ハンドマッサージから始めました。

できるだけ多くの方に接するために、片手5~6分ずつの簡単なマッサージですが、レクリエーションが終わった後もお待ちくださる方がいるほどの好評でした。

 

 ちょうど面会にいらしていたある入居者さんのご主人様から、

「そう、まさにこういうケアが必要なんですよ。妻は指先が冷え性で、運動療法士の治療も受けていますが、それとは別に、こんな風に温かみの伝わるふれあいが必要なんです」

と嬉しいお言葉をいただきました。

 

こうして一人一人とお顔を合わせ手に触れながら、サロンでのマニキュアやフェイシャルにお誘いしました。

 

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一番最初のご予約は、80歳のマダム。週末に施設を訪れた長女さんが私が各お部屋に配布したソシオエステティックのご案内を見て、さっそくご予約をくださいました。

私はお部屋にお迎えに行くと、驚いた様子で

エステティック? 娘が予約してくれたの?」

とても嬉しそうでした。

お体が不自由になる前は定期的にエステティックサロンに通っていらしたそうで、長女さんがそのサロンブランドの化粧品を持参し、今でも同じものを愛用し続けていらっしゃいます。そこでご本人のご希望通りにその化粧品を使用してフェイシャルエステを行いました。

 

エステティシャンにマッサージしていただくのは、10年ぶりくらいだわ。気持ちよかったわ。同じクリーム塗っていただいたのにいつもと全然違うわね」

 

フェイスパウダーで肌の表面を整えてから、チークと口紅を塗って車椅子でお部屋まで戻る途中、

「若返って別人みたいですね」

「マダム キャロン、さらにおきれいになりましたね」

すれ違う職員さんが立ち止って、温かいお声をかけてくださいます。

 

施設の内部とはいえ、ビューティーサロンに出向くことはちょっとした外出のようなもので、足のご不自由な高齢者を自室に一人ぼっちで閉じこもりきりにさせないためにも役立っています。

 

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マダムA(97歳)マダムB(95歳)姉妹はお互いに配偶者に先立たれ、今ではお隣同士のお部屋です。いつも二人ご一緒に行動していらっしゃるので、サロンにもそろってお越しくださいました。

近年地震津波のニュースが大きく報道されていることもあり日本の事はテレビで見てご存知ですが日本人に会うのは私が初めてとのことで、

 

「日本からこんなに遠くまでよく来てくれましたね」

「フランスから日本まで飛行機で何時間くらいかかるのですか」とか

地震に遭ったことありますか」

 

マッサージの最中も質問攻めにあい、賑やかなおしゃべりの中で楽しいひと時を過ごさせていただきました。

お年を召されても、遠く離れた未知の国に思いを馳せることは好奇心を刺激すること間違いなしです。

 

お二人とも一度もエステティックサロンに行ったことがないばかりか、お化粧もしたことがないとのことで、口紅の色をピンク系にしようかオレンジ系にしようか、それとも赤にしようか迷った末、マダムBがピンク色にすると、マダムAはオレンジ色を選びました。それぞれご自分の顔を鏡でじっくりご覧になっているその様子に、私は自分が生まれて初めてこっそり母の口紅を試した時のことを思い出しました。

 

なんだか急に大人になった気分だったのを覚えていますが、お二人はどんな気分なのでしょう。次回は初めてのマニキュアにトライしていただきます。

 

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引き続き、一人の男性が歩行器を押しながら歩いてサロンにいらっしゃいました。

「いまさら手入れしても仕方ないとは思うけれど、鏡に映った自分を見て醜いと感じるようになってきたので、100歳にして生まれて初めてエステを試しに来ました」

「えっ100歳なんですか? とてもそうは見えませんよ」

「厳密には100歳と8か月です」

「ではさっそく若返りエステを始めましょう」

エステの最中は、お孫さんや曾孫さんのお話を楽しくお話しくださいました。

最後に頭髪を櫛で簡単に整えて、シャツの襟をきちんと折り返して差し上げると、先ほどよりも表情も生き生きして見えます。

「さっぱりして気持ちよかったです。妻にもエステを体験させてやりたかった。先に逝ってしまったから残念です。またこの次もよろしくお願いします」

ご夫婦そろって敬虔なクリスチャンで、新婚旅行はルルドに巡礼に行かれたほど。一週間おきに施設内のチャペルで行われるミサには欠かさず参列していらっしゃいます。

その後は、毎回ミサの前にサロンに足を運び、身だしなみを整えてからお出かけされるようになりました。

 

101歳のお誕生日が間近に迫ったある日、散髪もきれいにすまされていらっしゃいましたので

「今日はまた一段と男前ですね。お出かけのご予定ですか」

と問いかけると

「長い長い旅への出発がもう目の前まで来ているから、あちらで皆さんにお会いしても恥ずかしくないように、準備しているのですよ」

とお答えが返ってきました。

 

片手が不自由なことを除けば、身の回りの事も自分でなされるし、まだまだ十分お元気そうに見えるのでたいへん意外に感じましたが、あちらの世界に思いを馳せていらっしゃると知り、

「もうどうせこの先長くないのだから」

と投げやりに考えるのではなく、

「そろそろあちらへの旅立ちの用意をしている」

という心情に触れ、最期を迎えるその時まで、ソシオエステティシャンとして少しでもお役に立てていることをうれしく思いました。

 

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また別の男性は、ある日私が居室にお迎えにお伺いすると、フェイシェルエステを受ける準備に、看護師にひげをそってもらっている最中でした。

一旦社会の第一線から退き、さらには施設に入居し、社交の機会がなくなると、どうしても身だしなみに気を使わなくなってしまうものです。

無精ひげを生やしたままで、周囲や面会にいらしたご家族にもだらしない印象を与えるようになってしまいます。

フェイシャルエステのために髭をそるという行為自体が、もうすでにご自分の外見への執着心や社会性を取り戻すことに役立っている良い一例です。

 

 

よく施設に面会にいらしている息子さんからのご依頼でマニキュアをさせていただいた87歳の女性は、一旦は派手なマットなピンク色をお選びになられたのですが、親指に塗るや否や、

「あ~ダメダメ、こんな色目立ちすぎるわ」

と結局パール入りのパステルピンクに変更しました。

それまでとても落ち着いた様子でいらっしゃったのに、最後の一本を塗り合わるや否や、突然そわそわしはじめました。

お疲れになったのかと思うと、

「早く戻って、夫にこの手を見てもらわなくちゃ」

とまるで恋する乙女のような微笑みをうかべられました。

ご主人様はもうお亡くなりになっていますので、おそらく息子さんと混同されていらっしゃるのでしょう。

いくつになっても長年連れ添った配偶者を想う気持ちが微笑ましく、生前はさぞかし夫婦仲睦まじかったのだろうと羨ましく思いました。

 

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パリ暮らしも長くなりましたが、それでもいまだに日常生活の中で、外国人だからなの

か、アジア人だからなのか、もしくは日本人だからなのか、差別されていると感じることがあります。

確かにフランス人でないのだから仕方ないのですが、気分のいいものではありません。ところが、ソシオエステティシャンとして高齢者に接するにつれて、日本人であることを不利だと感じなくなってきました。

 

この高齢者福祉施設は、田舎町にあるので、日本人に出会ったことのない方がほとんどですが、その分一度お会いしたら皆さん私の事をすぐに覚えてくださいます。

私の方が入居者一人一人のお顔とお名前を覚えるのに苦労しています。

 

それに加えて、十数年前パリで働き始めたころは、言葉のハンディを恨めしく思ったものでしたが、経験を重ねるにつれて、言葉はスキンシップやジェスチャー、アイコンタクトなど数あるコミュニケーションの手段の一つに過ぎないのだと感じるようになってきました。

 

どれほど言葉巧みでも、相手の心に届かなければ何の意味もありません。

逆に、たとえ相手が耳の聞こえない、目の見えない、または口のきけないような限られたコミュニケーション手段しかない状態だったとしても、手と手のふれあいや肌に触れることで心を通わせたり、思いやりを伝えたりすることもできるのです。

 

どれほど健康に気を配っていても、身体は年老いていき、視力や聴力等も衰えていき、人生の終焉にさしかかっていることを意識せずにはいられませんが、ソシオエステティシャンの手により心地よく刺激され、きれいになった自分の姿を鏡越しに目にし、

「自分はまだ生きている、そしてこれからも生きていく途中にいる」

のだという自覚を促すことができると確信しています。

 

いくつになってもエステティック。

私もまだまだ、負けてはいられません。

今夜は自分の顔もしっかりとマッサ-ジしなくては!

 

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心に皺を作らないパリジェンヌのきれいの秘訣

 

 

「ボンジュール マダム マルタン、ご機嫌いかがですか?」

 

淡いベージュ色のコートをお預かりしながら、近況をお伺いする。

 

「しばらく南仏の別荘で過ごしていたから、パリは風が冷たくて体調がすぐれないわ。

年を取ると寒さに弱くなるわね。お肌が突っ張るから保湿ケアをよろしくね」

 

「お部屋お寒くないですか。ベッドは温めてありますが、温度の調節もできますのでご遠慮なくお申し付けください」

 

と私が話している目前で、彼女はためらう様子もなく衣服を脱いでいく。

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グレーのワンピースに黒のハイヒール……シンプルで上品な装いの70代のマダム マルタンはいきなり黒いレースのブラジャーとガーターベルト姿で私の方に向き直る。

 

「寒くないから大丈夫よ。私このままでよかったかしら?」

 

まるでフランス映画の一場面のよう。

 

「こちらにパレオがご用意してございますので、これを羽織ってくださいませ」

 

とっさのことで言葉が出てこなかったけれど、何か言った方がよかったのだろうか?

“今日のワンピースよくお似合いですね” とか “素敵なコートですね” とか洋服なら褒め言葉を心得ているけれども、“ランジェリー姿がセクシーですね” まさかそんなことを言うわけにはいかないし……。

 

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それにしても先ほどパリは寒いとおっしゃっていらしたのにどうしてこんなに薄着なのでしょうか?

私なんて、冬はユニクロヒートテックが欠かせないのに、マダム・マルタンは、毎日こんな魅惑的なランジェリーを身に着けていらっしゃるのかしら?

 

ひょっとして私に見せるため? まさか!!!

 

それともこの後、愛人とランデブー? 

 

17世紀の作家セヴィニエ夫人が、

 «Le cœur n’a pas de rides. I est toujours jeune.»

「心には皺はない、いつまでも若いまま」と素敵な言葉を残したように、

パリジェンヌは、いくつになってもパリジェンヌ。

女性であり続けることに年齢制限なんてないのですね。

私たちも、50代になっても60代になっても女性であることを心がけていたいですね。

でもガーターベルトを身に着けた20年後の私、とても想像できません。

まだまだ修行が足りませんね。

 

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そういえば、エステ学校の時も、脱毛実習のモデルになるため洋服を脱ぐと、皆ランジェリーが素敵だったのを思い出します。

脱毛ワックスが付着するかもしれないのに、どうしてこんな繊細な素材のものを身に着けてくるのかと疑問に思っていました。

日ごろから見えないところにも気を使っているのか、それとも人前で脱ぐ日は、そのつもりで心得ているのか? 

それはパリジェンヌにしかわかりません。

 

ところで余談ですが、職場の同僚(フランス人)と私では、体感温度が全く違うので、夏はエアコンが効きすぎて寒いし、冬は暖房をゆるめられてしまい、毎日寒い思いをしています。

真冬でも仕事中は半袖を着ていても平気なのです。

 

フランス料理を食べていると、体から熱が発生するのでしょうか?

 

レストランで、お隣のテーブルのスリムなマダムが、分厚いステ-キを召し上がった後で、チーズ、デザ-トまでしっかりフルコ-スを楽しんでいらっしゃるのを見かけることは珍しくありませんが、一見スリムな彼女たち、実は骨格がしっかりしていて筋肉質なので食欲旺盛で、平均体温が37度はあるそうです。

人種によって体温が違うのですね。私は36度くらいです。

 

20年前にホームステイさせていただいた家庭のマダムが、薄いキャミソールで就寝しているのを見て「寒くないのかしら?」とは思っていましたが、フランスのナイトウエア-はシルク地にレースをあしらったフェミニンなものが主流で、保温性は考慮されていません。

かねてから映画の就寝シーンを見るたびに、あんなに薄着でベッドに入るなんて、リアリティーに欠けると思っていましたが、本当なのですよ。

私はそれでは寒くてぐっすり眠れそうにありませんので、パジャマはいつも日本で購入しています。

 

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真冬でも、パリのマダムは、デコルテの開いたノースリーブのドレスに毛皮を羽織り、肌がすける薄いストッキングにハイヒールでソワレに出かけます。厚手のタイツを履いてひざ下までしっかりブーツで覆っている私は、ドレスコードにはずれているのが恥ずかしくて、いたたまれなくなったことがあります。

 

でも、体感温度の違いは、仕方がありませんね。

冬の間は、しっかり防寒して、風邪をひかないように元気に過ごしたいですもの。

健康もきれいの秘訣ですからね。

 

心には皺はないけれども、心はとても傷つきやすいもの。

きっと、新しい恋が古い傷を癒してくれ、時の流れが傷痕を消し去ってくれるのです。

傷ついても、傷ついても、へこたれずに立ち直り、強く生きることが、綺麗の秘訣なのですね。

 

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キレイは誰のため?

 Le Bonheur est le secret de toute beauté.

Il n’y a pas de beauté sans bonheur ?           Christian Dior

 

幸せは、すべての美しさの秘訣です。

幸せでなければ、綺麗ではいられません。

 

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まだ若かったころの私にとって、お洒落やお化粧は、自分を他人によく見せるための鎧のようなものでしたが、50代になった今では、そんな重苦しいものはさっさと脱ぎ捨てて、もっと気楽に自由に生きたいと思うようになりました。

 

ある時、自宅近くのブティックでヴァカンス用にサマ-ドレスを試着したところ、お隣からは、なんと偶然色違いをお召しになったマダムが出てきました。私は濃いピンク色、彼女は鮮やかなロイヤルブルーを身に着けていましたが、私を見るなり、

 

「そちらの色の方が素敵ね。私のサイズも持って来て頂戴」

 

と店員さんに頼んでいました。

彼女は私よりずいぶん年上で、ブルーの方がお似合いでした。

 

同様に、気に入ったけど買おうかどうか迷って結局買わなかった(洋服は、迷ったら買わないことにしているので)花柄のワンピースを身に着けた、私よりずっと年上の女性に遭遇したこともあります。

 

もちろんその逆の経験もあります。

 

同じ服を着た、自分と親子ほども年齢の離れたマドモアゼルと同席したら、なんだか居心地が悪いと思うのは私だけでしょうか? 

母と私が同じ服を着ることなんてなかったのだけれど…。

 

洋服は、各ブランドが一定の年齢層に的を絞っているものだと思っていましたが、それはもう昔の話のようですね。

 

 Charlotte Gainsbourg et sa fille - Comptoir des Cotonniers

 

飾りすぎないナチュラルな女性らしさが人気で、今ではパリジェンヌの日常着に欠かせないブランド、コントワ-ル・デ・コトニエ-ルは、もう20年近く前から母娘モデルのオ-ディションを開催しています。

ブランドのコンセプトは、ペアルックではなく、母娘それぞれが個性を大切に、自分のセンスに合ったものを身に着けることができるブランド展開。

1軒のブティックの中で、20歳未満の娘も、40代50代の母親もそれぞれが好みのスタイルを見つけることができるブランドとして、幅広い年齢層の顧客を獲得し国際的なブランドに成長しました。

女優シャルロット・ゲンズブ-ルとその娘のように有名人母娘を広告に起用することによっても、ブランドのスタイリッシュなイメ-ジを高めてきました。

 

もはや、年齢に応じたスタイルという考え方自体がなくなってきている一例ですね。

 

「私はもう50歳だから」とか「もう若くないのだから」とか、年齢に合わせるものではなくて、お気に入りのブティックで、今の自分の気分に相応しいもの、自分が気分よく過ごせるためのものを選べばいいのですね。

もう他人に見せるためだけに装わなくてもいいのです。

 

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では、エステティックサロンに足を運ぶのは、何のためでしょうか?

若返るため? きれいになるため?

 

先日、私の勤務するサロンに、盲目の女性がご友人に付き添われてご来店くださいました。

手触りで、肌が乾燥しているのや、眉毛が伸びているのがわかり、自分では見えないとはいえ、このままの状態ではいられないと、ご予約くださいました。

 

安心してくつろいでいただけるように、施術内容を一つ一つご説明しながら丁寧に1時間半のコ-スを行いました。

施術後、両手で入念に首から顎、頬、目元そして額を触りながら手のひらが吸い付きそうな肌の滑らかさを堪能されました。

 

エステに来てよかったわ。こんな風に大切に扱ってもらえると、たとえ目が見えなくてもきれいになったのがよくわかるわ。とっても気分がいいわ。幸せな気分で表情が緩んでしまうわ。流行のメイクやファッションには関心はないけど、せめて自分らしく年齢を重ねていきたいから、これからも時々お手入れをお願いしますね」

大変満足していただき、次のご予約をして帰られました。

 

お客様は、ご来店の際には、必ずしも機嫌がいいとは限りません。

「渋滞に巻き込まれた」とか「職場でトラブルがあった」とか、あるいはもっと深刻な問題を抱えているとか。

でも、エステ後に不機嫌なままお帰りになることは、好き嫌いをはっきり口にするパリジェンヌでさえひじょうにまれです。

 

女性は、他人に見せるためや異性を魅了するためだけに美しくありたいと願うのではなく、何よりも、日常の緊張感から解放されリラックスし、気分よく感じたいために、ひと時の心の安らぎと、幸せな気分を求めてエステティックサロンに足を運ぶのです。

 

大人の女性にとっては、美容もファッションも、自分が気分よく過ごせるためのもの。

疲れた時や落ち込んだ時は、着心地のいい洋服を購入したり、エステや美容院に行ったりして気分転換をしてきれいになりましょう。

 

キレイは誰のため? 自分自身のためなのです。

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タトゥー ~肌に刻み込まれた希望の光~

 

フランスの優勝で幕を閉じた今夏のサッカーワールドカップ

日頃はサッカーに関心のない私も、日本とフランスの試合はTVで応援しました。

その際に、サッカー選手の腕全体を覆っているタトゥーが目につき、日本では肩身の狭い思いをすることもあるタトゥーですが、海外では、隠すものではなく、周囲に誇らしげに見せるものであることを改めて認識しました。

 

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先日、「民衆を率いる自由の女神 前進あるのみ!」の中で取り上げた女性癌患者向けの雑誌「ローズマガジン」で、乳癌治療後に傷痕部分にタトゥーを入れた女性が紹介されています。

 

乳房再生後に、乳輪と乳頭に医療用のタトゥーを入れる治療は、ソシオ・エステティシャンとして大学病院での研修の際に目にしました。それは、治療後、乳房の見た目を元の状態に近づけ、乳房切除をわかりにくくするための医療行為の一環として行われるものでした。(20年近く前の話です)

 

今では、外科的手術の傷を覆い隠すためのみならず、精神的な苦しみを乗り越えるための心のささえとしてタトゥ-を入れるようになりました。

 

私はこれまでに、癌治療後、自分の変わり果てた姿を直視することができず、浴室ではサングラスをかける女性に何度か出会いました。

ある女性は、

「外出する時は、周囲に気付かれないように何とか取り繕っているけれども、帰宅して鬘を脱ぎ、左胸のパットを外すと、自分がしょんぼりしぼんでしまったような気分で、毎日サーカスのピエロを演じているよう。衣装もメイクも取りはらった素の自分自身は、人前に出る価値もない」

と感じていました。

 

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着替えをするたびに胸の傷痕を目にして涙を浮かべたり、浴室で鏡に映った自分の裸体から目をそらしたりと、自分の体の一部の切除による喪失感や、女性としての魅力を失ってしまったと感じる自信の喪失感に打ち勝つためにタトゥを入れるのです。

病後、新たな人生を踏み出すため、もう一度自分を美しいと感じるために、タトゥを入れるのです。

 

一度体に墨を入れたら簡単に消すことはできないとわかっています。

傷痕から目をそらすことはできますが、一方でタトゥーは人目を引き付けますから、誇りをもって他人に自分のありのままを見せる覚悟の末にタトゥーを入れることを決意するのです。

 

胸元に控えめに入れる人もいれば、上半身全体に入れる人もいます。

それまでは、傷痕が人目につかないようにと胸元の詰まった洋服ばかり着ていた女性が、ヌーディストビーチに行けるようになりました。

女性は自分をきれいと感じることで、どれほど勇気づけられることでしょう。

 

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癌の宣告を受けると、これまで食事にも健康にも気を配ってきたにもかかわらず病気になるなんてと、

自分の体に裏切られたと怒りを覚える人もいます。

病院では、自分の体は治療の対象物として扱われていると感じ、もう自分のもちものではなくなってしまったように感じます。

タトゥーのおかげで、

病に屈せずに、勇敢に立ち向かい、そして、ついに病を克服した自分の体に誇りを持てるようになるのです。

 

男性がタジタジしてしまうほどの強さと、男性を魅了する美しさを兼ね備えたフランスの女性たち。

 

フランス人男性は、日本人女性は、優しくて可愛いから好きだといいます。

いつも笑顔を絶やさないから?

ノ-と言わないから?

私はなんだかバカにされているようでいい気がしません。

つらい時にも自分の感情を表に出さない辛抱強さと、まず相手のことを気遣う思いやりのあるのが日本人女性だと思うのです。

 

私たち日本女性も、そろそろカワイイから卒業しませんか?

 

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